連載コラム

2017/7/17NEWFREE

ウォーレン・バフェット

株式投資のドクターX

目からウロコの経済用語「一語千金」

玉手義朗

「ニューヨークのスミス&ウォレンスキーって、知ってる?」と知人女性に尋ねられた。映画「プラダを着た悪魔」にも登場するステーキハウスで、ぜひ行ってみたいという彼女に、「ランチがものすごく高いよ」と私。毎年、このレストランで、ある人物とランチを共にする権利がオークションにかけられていて、2016年の落札価格は345万ドル。「ある人物って誰?」という彼女に、「ドクターXだよ」と教えてあげた。
 大金を払ってまで、ランチを共にしたいという人物の名前は「ウォーレン・バフェット」。株式投資で連戦連勝、17年のフォーブス長者番付でマイクロソフト創業者ビル・ゲイツに次ぐ第2位、756億ドルもの資産を築き上げた投資家だ。
 バフェットは、人気ドラマ「ドクターX」の主人公、大門未知子そっくり。「私、失敗しないので」と公言、患者の病状を正確に把握し、適切な処置で命を救ってゆく大門未知子。バフェットも、株式市場が暴落しても動揺することなく、「失敗しない投資」を続けてきた。
 バフェットは、長期的な視点から割安となっている株式を買い、値上がりするまで待つという「バリュー投資」を基本としている。事業内容や業績予想、経営者の能力などを調べ上げ、割安と判断した優良銘柄に絞って投資してきた。08年のリーマンショックも、バフェットには好機となった。ダウ平均株価が1万1000ドル台から6600ドル台まで暴落する中、バフェットは敢然と買い向かう。株価はショックで一時的に下落しているだけと判断、値下がり幅が大きかった金融株を中心に大量購入したのだ。バフェットの読みは的中、ダウ平均株価はやがて2万ドルを突破し、膨大な利益を得る。リーマンショックで瀕死の状態に陥ったにもかかわらず、「株式市場は必ず治る」と判断したバフェットは、まさにドクターXといえるだろう。
 バフェットは自らの投資哲学を、分かりやすい言葉で披露している。「皆がどん欲な時に恐怖心を抱き、みんなが恐怖心を抱いている時にどん欲であれ」という考えが、リーマンショックをビッグチャンスに変えた。
「第1ルール、損しないこと。第2ルール、第1ルールを忘れるな」は、バフェットの慎重な投資姿勢を表している。「自分はいずれ金持ちになると信じていました。それについては、一瞬たりとも疑ったことはありません」と言い切るバフェット。「私、失敗しないので」というわけだ。
 巨額の資産を持つバフェットだが、私生活はとても質素。故郷ネブラスカ州オマハにある自宅は築60年で、好物はコカ・コーラの中でも特に甘いチェリーコーク。ドラマのドクターXが、安アパートに住み、手術後にガムシロップを飲み干すのとそっくり。
 株式投資のドクターXから、投資の極意を直接聴くチャンスであるだけに、ランチ権が高騰するのも無理はないが、そのお金は全額が慈善団体に寄付される。バフェットは慈善活動にも熱心で、その高潔な人柄が大きな尊敬を集めている。
 バフェットの投資哲学は、ランチ権を手に入れなくても、多くの解説書や、随時開示される投資銘柄などで知ることができる。株式投資で不安になったら、ドクターXの「診察」を受けてみてはいかがだろうか。

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エコノミスト

玉手義朗

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。現在はテレビ局勤務。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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