連載コラム

2016/12/27FREE

「円安・株高」という名の迷信

経済万華鏡

浜矩子

 このところ、円安が続いていますね。そして、株高です。円安が進むと株価が上がる。いつもそうです。なぜだろう。今さらながら、こんなことを考えてしまいます。

 円安になれば、輸出が増える。輸出が増えれば、輸出企業の業績が良くなる。輸出関連株は買いだ。更には、輸出の好調が全般的な経済成長の加速につながる。成長関連株は買いだ。こうして「読みの連鎖」が株価を押し上げる。理屈としては、以上のように考えられます。
 ですが、実際にはどうでしょうか? 本当に、投資家の頭の中を上記のような発想のリレーが駆け巡っているのでしょうか。だから、株高というゴールに到達するのでしょうか。
 ここが、いまや、かなり怪しくなっていると思うのです。ひょっとすると、この競技はもはやリレーではなくなっているのではないでしょうか。次から次へと読みのバトンタッチが進んで、ゴールに達するのではない。ただ単に、「円安」ときたら、誰もが株高というゴールをめがけて脱兎のごとく疾走し出す。思考停止状態での短距離レース。いまや、これこそ、円安が株高を生む関係の真相なのではないか。とても、そんな気がします。

 皆さんは「風が吹けば桶屋が儲かる」という古い言い方をご存じですか? 日本の古い言い伝えです。「風が吹けば」と「桶屋が儲かる」の間をつなぐ読みの連鎖は、どうなっているでしょう。ご存じない皆さんは、ぜひ、調べてみて下さい。その当否はともかく、なかなか面白いですよ。
 ただ、この言い伝えが古くなれば古くなるほど、「風が吹くと」と「桶屋が儲かる」の間の繋ぎの読みの連鎖は、次第に忘れられていく可能性があります。実は、もうすっかり忘れ去られているかもしれません。そして、風が吹くと「あぁ、桶屋が儲かるんだな」と反射的に思ってしまう。そうなると、嵐の日には、桶屋さんの株がむやみに上がる。そんなことにもなりそうです。
 もっとも、いまや、桶屋さんそのものが江戸の昔物語にしか出てこない存在ですが、言いたいことはお分かり頂けますよね。

 同じような調子で、円安になると何も考えず、反射的に株を買う。誰もがそうするだろうと思うから、誰もが株を買う。実をいえば、こんな短絡が経済を動かしてしまっているのかもしれません。本当は、円安が経済活動にどう効くかは、その時の状況によりけりです。経済活動の体質にもよりけりです。何かにつけて、頭の中のリレーは重要です。中抜き的短絡はとても危険です。疾走しているうちに崖から落ちるかもしれません。
 単なる思い込みに基づいて「円安=株高」を信じ込むなら、それは迷信です。迷信に振り回されてはいけません。

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同志社大学大学院ビジネス研究科教授

浜矩子

1952年生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長等を経て、現在に至る。『グローバル恐慌』『スラム化する日本経済』『ユニクロ型デフレと国家破産』『浜矩子の「新しい経済学」~グローバル市民主義の薦め~』など多数の著書がある。

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