連載コラム

2017/2/2FREE

日米英、三者三様のビッグスピーチに何をみる?

経済万華鏡

浜矩子

 今年(2017年)の年頭には、内外で政策責任者たちの大きな演説が相次ぎました。1月17日には、イギリスのテリーザ・メイ首相がEU離脱交渉に向けての基本姿勢を明らかにしました。1月20日には、アメリカでドナルド・トランプ新大統領の就任演説が行われましたね。そして、この日には、日本の安倍晋三首相も第193回国会の冒頭で施政方針演説を行いました。

 その後、トランプ氏はすさまじい勢いで「大統領令」を乱発していますね。その中には、難民はもとより、特定国については広く一般市民についても入国を一時停止するという過激な措置もあり、世界中をがくぜんとさせています。明らかな人権侵害だと思います。それを大統領令という形で発動してしまう。ひどいことになってきました。目が離せませんね。
 それはそれとして、ひとまず、上記三つの演説に注目したいと思います。メイ首相のキーフレーズは「グローバル・ブリテン」でした。EUという枠組みから飛び出したイギリスは、広く地球経済の中を伸び伸びと泳いでいく。今までよりも、もっとオープンになり、もっと多様な皆さんとパートナーになっていきます。そう訴えたのです。
 厳しい離脱交渉を控えて、少々、強がっていた面があると思います。ですが、より開かれたイギリスを目指すというメッセージには、総じて、今日的時代適合性があったと思います。

 全く対照的だったのが、トランプ氏の言い方です。彼は「アメリカ・ファースト」を連呼しました。これからは「バイ・アメリカン、ハイヤー・アメリカン」だと雄叫びを上げました。愛国消費と愛国雇用に徹するというわけです。
 イギリス国内にも、「ブリテン・ファースト」を叫ぶ人たちがいます。EU離脱賛成派の中で、この人々が一定の割合を占めていました。ですが、メイ首相は彼らには同調していません。開かれた海洋国としてのイギリス。その伝統的な姿に、EU離脱の意義を見いだす。そういう構えを示したのです。
 こうして、最も近しい「特別な関係」で結ばれている英米から、正反対の二つの政策姿勢が示されました。今後の成り行きが大いに注目されますね。メイ首相が一早くアメリカを訪れた際にも、この違いが折に触れてにじみ出ていたと思います。

 安倍首相の施政方針演説の中では、「国創り」という言葉が圧倒的に前面に出ていました。ここが大いに気になりました。
 その一方で、財政健全化という言葉が演説から抜け落ちてしまっていました。これは、一体どういうことでしょう。「国創り」をどんどん進めるためには、財政の健全性のことなど、気にしていられない。そういうことでしょうか。これもまた、目が離せない問題です。
 要人たちの第一声の先に何が出てくるか。ご一緒に注視していきたいと思います。

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同志社大学大学院ビジネス研究科教授

浜矩子

1952年生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長等を経て、現在に至る。『グローバル恐慌』『スラム化する日本経済』『ユニクロ型デフレと国家破産』『浜矩子の「新しい経済学」~グローバル市民主義の薦め~』など多数の著書がある。

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