連載コラム

2017/3/24FREE

日本の○○ゲート

経済万華鏡

浜矩子

 そろそろ、「モリトモゲート」という言葉がはやり始めそうだな。このところ、そんなことを考えてしまいます。あるいは、「ガクエンゲート」という言い方になるかもしれません。

 皆さんは、「ウォーターゲート」事件をご存じでしょうか。自分が生まれるはるか前の話だ、という方も多いでしょうね。それは、1972年6月のことでした。当時、アメリカの民主党本部が首都ワシントンのウォーターゲート・ビルという建物の中にありました。そこに不審者が侵入し、現行犯逮捕されたのです。
 この事件の背後には、当時のリチャード・ニクソン政権による大掛かりな政治スキャンダルが潜んでいました。盗聴あり。贈収賄あり。政敵打倒のための様々な策謀あり。隠蔽あり。脅しあり。数多くのダークな行為が暴き出されました。そして、1974年8月、ついにニクソン大統領が弾劾必至の状況に追い詰められ、辞任に至ったのです。

 以来、何かにつけて、諸々の醜聞が発生すると、それに「○○ゲート」という名前をつける風習が世界に広まりました。もっとも、日本では、必ずしもこうしたネーミング手法が定着しているわけではありません。ですが、このままでいくと、まずは海外メディアが「モリトモゲート」や「ガクエンゲート」を使い始めそうな気がします。
 ウォーターゲート事件の主役がニクソン大統領だっただけに、「○○ゲート」には、アメリカ大統領にまつわるものが目立ちます。かのヒラリー・クリントン氏の夫、ビル・クリントン大統領に関しては「モニカゲート」が話題になりました。モニカ・ルウィンスキーさんという女性との「不適切な関係」問題です。

「レーガノミクス」で一世を風靡したロナルド・レーガン大統領には、「イランゲート」がありました。イランへの武器輸出と、それで得た資金をニカラグアの反政府勢力「コントラ」支援に横流しした疑いでした。
 現職のドナルド・トランプ大統領については、「ロシアゲート」あるいは「クレムリンゲート」が取り沙汰されています。トランプさんは、ロシアのウラジミール・プーチン大統領がとっても好きらしい。彼に頭が上がらないような感じもある。なぜなのか。その背後には、トランプ大統領とクレムリンとの間の何やら秘められた関係があるのか。ないのか。どうなのか。

 元祖のウォーターゲート事件の場合、単なる不法侵入事件かと思われたウォーターゲート・ビル侵入問題が、二人の新聞記者の嗅覚を刺激しました。ワシントン・ポスト紙のカール・バーンスタインとボブ・ウッドワードのコンビです。
 艱難辛苦を掻い潜る彼らの執念の追及。そして、それをサポートし続けたワシントン・ポスト紙の信頼と勇気。これらが絶妙のブレンドを形成しました。そして、大統領官邸という巨大な存在を覆う分厚い隠蔽のベールをはぎ取ったのです。
 日本でも「○○ゲート」はやりとともに、その真相を暴くメディアの心意気が広がるといいですね。期待とともに応援しましょう。

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同志社大学大学院ビジネス研究科教授

浜矩子

1952年生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長等を経て、現在に至る。『グローバル恐慌』『スラム化する日本経済』『ユニクロ型デフレと国家破産』『浜矩子の「新しい経済学」~グローバル市民主義の薦め~』など多数の著書がある。

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