連載コラム

2017/5/26FREE

マクロン新フランス大統領の一つ(だけ)の名言

経済万華鏡

浜矩子

 フランスに新大統領が誕生しましたね。ご承知の通り、フランス政界の新星、エマヌエル・マクロン氏です。その若さといい、年上の妻との年齢格差といい、何かと話題を呼んでいる人ですよね。閣僚たちも相対的若者が多く、女性比率も高い。そして彼は、自分は左派でもなく右派でもなく、「真の中道」だと主張しています。全てにおいて型破り派のマクロン新大統領です。

 型破り派だけに、どこまで成果を上げられるかは全くの未知数ですね。フランスでは、近々、議会選挙もあります。マクロン党は、果たしてどれくらい議席を確保出来るでしょうか。むろん、それによって今後の展開が大きく左右されることになります。大統領といえばとても偉そうですが、実はその意向も立法府の決定権には規定されます。
 マクロンさんは親EU派なので、欧州委員会の幹部たちなどからは、大いに歓迎されています。彼の国内経済改革構想にも、期待が寄せられています。ですが、全ては、さしあたりまさに期待値に過ぎません。

 筆者も、マクロン大統領の手腕についてはさしあたり何とも見極めがつきません。まずは、これからの成り行きを見るほかはありません。ただ、これまでの彼の発言の中に、一つだけ、筆者として大いに注目したものがありました。それは、彼が大統領選挙の決選投票に進んだ時のことでした。その時、彼は次のように言いました。「今、対峙しているのは、愛国主義と国粋主義だ」。
 これは、彼と決選投票を争うことになったマリーヌ・ルペン氏のスローガンに対抗したものでした。彼女は「いまや左翼も右翼もない。あるのは、グローバル対愛国の対決のみだ」と言いました。これはとても危険な言い方である。日頃から、グローバル化の犠牲になってきたと感じている人々にとって、悪魔の甘言的魔力を持っています。この悪魔的甘言が、選挙結果の決め手とならなくて本当に良かったと思います。

 上述の通り、マクロンさんも「自分は右派でも左派でもない」と言っています。だからこそ、ルペン氏の「いまや右翼も左翼もない」発言に敏感に反応したのでしょう。いずれにせよ、このマクロン発言の評価すべき点は、愛国と国粋は違うと明言したところにあります。愛国というのも、実は怪しげな概念です。ですが、いずれにせよ、それを国粋主義の隠れみのにすることは、決してあってはならないことです。この点に焦点を当てたという意味で、マクロン発言は貴重だったと思うのです。
 愛国者なら、国家を崇め奉れ。排外主義に徹しろ。我々は、そんなメッセージに決して惑わされてはいけません。

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同志社大学大学院ビジネス研究科教授

浜矩子

1952年生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長等を経て、現在に至る。『グローバル恐慌』『スラム化する日本経済』『ユニクロ型デフレと国家破産』『浜矩子の「新しい経済学」~グローバル市民主義の薦め~』など多数の著書がある。

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