連載コラム

2015/11/17FREE

お笑い界の7年間、総まとめ

ブームの盛衰と新たなサバイバル時代の到来

お笑い芸人サバイバル

ラリー遠田

 2008年から7年にわたって続いた本連載も、今回で最終回を迎えることになった。これまでに137組の芸人について取り上げてきたが、今回はその締めくくりとして、連載が続いていたこの7年のうちに起こったお笑い界、テレビ界の変動について書いていきたい。

 一般に、お笑いブームが最高潮を迎えたのは08年から09年ごろとされている。このピーク時には、「爆笑オンエアバトル」(NHK)「エンタの神様」(日本テレビ系)「あらびき団」(TBS系)「爆笑レッドカーペット」(フジテレビ系)と、ネタ番組が乱立していて、毎週のように新しい若手芸人が現れて、一夜のうちにスターになっていく現象が起こっていた。01年から10年には、日本一の若手漫才師を決める「M-1グランプリ」(ABC、テレビ朝日系列)が開催されており、年末の大会で活躍した芸人は翌年から爆発的に仕事を増やしていった。ブーム最盛期の08年には、「M-1」は歴代最高視聴率の23.7%(関東地区)をマークしている。

 ところがその後、10年に入るとお笑いブームの勢いはみるみるうちに衰え、バブルがはじけてしまった。ネタ番組があまりにも増えすぎたために、若手芸人のネタが視聴者に飽きられてしまったのかもしれない。ネタ番組は軒並み終了に追い込まれた。その結果、無名の若手芸人が新たにテレビに出るチャンスは限りなく少なくなってしまった。

 その状況は今もあまり変わっていない。特に顕著なのは、東京や大阪のお笑いライブの観客も減っていることだ。ブームの時代には、ライブに出る芸人がテレビにも数多く出ていたので、ライブにもそれなりに客が来ていた。今は、そこにあまり人が集まらず、ライブで圧倒的な人気を誇るような芸人もほとんどいない。

 かつてのダウンタウンやナインティナインなどは、ライブで大勢の客を集めて、その実績を引っさげてテレビの世界に進み、そこでも売れっ子になっていた。これが今までのお笑い界では王道の出世コースだったのだが、その道を歩んでいける芸人がほとんどいなくなっているのが現状だ。それは、ライブにそこまでの熱気がないからだ。

 ただ、一方では、お笑いブーム復活のきざしはある。15年に入り、テレビ東京で「そこそこチャップリン」というネタ番組がレギュラー化された。また、ブームが過ぎて視聴率が下がり続けていたコントの大会「キングオブコント」(TBS系)も、審査システムの変更などが功を奏した結果、15年には数字が急上昇。過去最高の15.0%(関東地区)を記録した。さらに、5年ぶりに「M-1グランプリ」も復活することになった。世間でも再び、お笑いのネタをテレビで楽しみたいというニーズが高まってきたのかもしれない。

 また、15年に入ってから、急速に人気を獲得するような若手芸人の頭数が一気に増えてきた。代表的なところだけでも、バンビーノ、8.6秒バズーカー、クマムシ、とにかく明るい安村、ピスタチオ、おかずクラブといった面々が出てきている。ここ数年は、このように1つのギャグやネタが人気となって売れる芸人はせいぜい年に2〜3組に過ぎなかったのだが、15年はすでに5〜6組以上はその候補が存在する。ここにも、ブームへの下地となるような新しい動きが感じられる。これからも、ライブに行ったりテレビを見たりしてお笑い界の動向をうかがいながら、次にブームが訪れて業界が活性化するのを楽しみに待ちたいと思う。

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お笑い評論家

ラリー遠田

1979年生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経てフリーライターに。お笑いに関する取材、執筆、イベント主催、マスメディア出演など、多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『全方位型お笑いマガジン コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務める。株式会社吉田正樹事務所とマネジメント業務提携契約を結んでいる。著書に『ダウンタウンVSナイナイ最強考察』(2012年、晋遊舎)、『M-1戦国史』(2010年、メディアファクトリー)、『THE 芸人学 スゴい!お笑い 戦国時代をサバイバルする30人の成功法則』(2009年、東京書籍)、『この芸人を見よ!』(2009年、サイゾー)、『松本人志はなぜ人に媚びず自信満々に成功し続けるのか』(遠田誠名義、2009年、あっぷる出版社)がある。
ラリー遠田ブログ「おわライター疾走」ケータイ版URL:http://owa-writer.com/cgi-bin/mt/plugins/Mobile/mtm.cgi?b=1http://owa-writer.com/cgi-bin/mt/plugins/Mobile/mtm.cgi?b=1

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