連載コラム

2015/11/3FREE

入浴剤に和菓子、“おうちぼっち”にうれしいクリスマスアイテム

マーケティングなう

牛窪恵

 ハロウィーンが終わり、早くも街はクリスマスムード。
 クリスマスと言えば、かつては恋人たちが、豪華なホテルやレストランで、いわばラブラブの非日常を楽しむ日だった。ところが近年は、「ひとり」で過ごす男女が珍しくない。

 最大の理由は、「一緒に過ごす恋人がいない」男女が増えたから。
 ある調査によると、「交際相手がいない」成人(20歳)男女は74.3%(オーネット「第20回 新成人意識調査」2015年)。別の調査で対象を20代全体に広げても、「現在、交際相手がいない」女性は60.0%、男性は76.3%との結果が出ている(リクルートマーケティングパートナーズ「恋愛観調査2014」2014年)。
 そのあたりの実態や背景については、15年9月末に出した新刊『恋愛しない若者たち〜コンビニ化する性とコスパ化する結婚』(ディスカヴァー21)(http://www.amazon.co.jp/dp/4799317695)に詳しく書いたが、いまや「恋人ナシ」は堂々のマジョリティーなのだ。

 昨年のクリスマスも、ある調査で未婚の男女にイブと当日の予定を聞いたところ、「恋人とクリスマスディナー」「恋人とイルミネーション見物」はいずれも4位以下。わずか8%未満という結果だった(at home VOX「理想のクリスマス調査」2014年)。


 そんななか登場し始めたのが、クリスマスをひとりで過ごす「クリぼっち」向けのホテルやレストランプランなど。先の調査でも、男性のトップと女性の3位は「一人で過ごす」で、今年も「クリぼっち」は依然として多そうだ。
 そこで、いま注目なのは、「おうち(自宅)」でひとりのクリスマスを過ごす男女にうれしい、「おうちぼっち」用のクリスマスアイテムだ。

 例えば、クリスマス仕様のバスグッズ。
 高品質のカカオバターやココナツオイルなどを使い、見た目もお菓子そっくりの入浴剤が人気の、ドイツの入浴剤ブランド「バデフィーBadeFee)」ではこの時期、ツリーや雪の結晶をデザインしたクリスマス限定品を発売する。来年1月末まで、東京・ラフォーレ原宿に期間限定ストアをオープン中ということもあり、「かわいすぎて、使うのがもったいない!」「1000円以下で、クリスマス気分が味わえておトク」と女子たちに注目されている。
 自然派コスメやバス用品を製造・販売するLUSHでも、サンタクロースの顔のバスボムや天使の姿のバスメルツ(ともに入浴剤)など、クリスマス限定品は毎年人気のシリーズ。「自分へのクリスマスプレゼントに買っちゃった」「使うまではツリーに飾っておきます」などと、ブログやツイッターに画像をアップする男女も目立つ。
 かわいくおしゃれなバスグッズは、自分が癒やされるだけでなく、写真栄えする点もポイント。SNSなどで「見て、見て」と画像をアップすれば、「いいなあ〜」「私も欲しい」などと反応が返ってくる。おうちぼっちでも、イベント気分を誰かと分かち合え、さびしくない、というわけだ。
 ある調査からも、そのことが分かる。首都圏の大学生に、おひとりさま行動がさびしくない理由を聞いたところ、61.5%が「携帯電話、スマホ等がそばにあるから」と回答し、トップ。「SNSを通じて友人の状況等を把握できるから」(40.5%)も3位との結果が出ている(東京広告協会「大学生の友人関係に関する意識調査」2012年)。

 そして、クリスマスの必須アイテムとも言えるスイーツ。一人用のクリスマスケーキはすでに当たり前だが、近年、じわじわ人気が高まっているのが、クリスマス和菓子。画像に撮ってSNSにアップするだけで、「かわいい!」「クリスマスに和菓子って意外!」などと共感を呼ぶカキコミが入りそうだ。
 デコ八ッ橋は、その代表例だろう。京都の銘菓・八ッ橋の老舗、聖護院八ッ橋が展開する店舗nikinikiニキニキ)などで買える商品で、赤やピンク、水色、黄色といったカラフルな生地を使い、和菓子ではちょっと意外なモチーフを立体的に形作る。昨年のクリスマスは、つぶらな瞳のサンタクロースやニンジンの鼻の雪だるまなどが、「かわいすぎて食べられない!」と話題になった。
 他にも、東京の老舗和菓子店、喜田家(東京都足立区)や麻布 青野総本舗(同港区)など、クリスマス和菓子を販売する店は年々増えているようだ。

 若者たちの恋愛事情の変化にともない、様変わりするクリスマス。恋愛消費はかつての勢いを失ったが、「おうちぼっち」を狙ったマーケットはまだまだいろいろな分野に波及しそうだ。


 皆さま、これまで足掛け6年にわたり、「牛窪恵のマーケティングなう」の連載をお読み頂き、ありがとうございました。
 連載はこれで最後になりますが、マーケティングの種は、毎日の通勤電車や社内の何気ない会話など、さまざまな場所に眠っています。
 どうぞぜひ、「何か面白いことはないか」との目で「種」を発見すべく、好奇心を絶やさないでくださいね。
 またいつか、別の形でお会いできる日を楽しみに……。
 本当にありがとうございました。


毎月1回、皆さまに消費トレンドをお届けしてきた当連載は、第65回をもちまして終了いたします。長らくのご愛読ありがとうございました!


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マーケティングライター

牛窪恵

1968年生まれ。マーケティング会社インフィニティ代表取締役。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。財務省・財政制度等審議会専門委員、内閣府・経済財政諮問会議政策コメンテーター。日本大学芸術学部映画学科(脚本)卒業。大手出版社勤務を経て転職後、国内外で広告、マーケティング理論や行動経済(心理)学を学び、著書として『独身王子に聞け!』(2002年、日本経済新聞社)、『男が知らない「おひとりさま」マーケット』(共著、2004年、日本経済新聞社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(2008年、講談社プラスアルファ新書)ほか、徹底した若者取材によるヒット作を世に送り出す。数多くのテレビ番組のコメンテーター出演やトレンド分析でも知られる。「おひとりさま(マーケット)」(2005年)、「草食系(男子)」(2009年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。最新刊は2015年9月刊行の『恋愛しない若者たち~コンビニ化する性とコスパ化する結婚』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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