連載コラム

2016/9/30FREE

ヤウッカマー、日本中で撮りまくる!

子連れ・ババ連れ帰国旅行3

亜香里のミャンマー嫁入り日記

鈴木亜香里
構成・文/井下優子

 ミンガラーバー! こんにちは! 中国系ミャンマー人と結婚して、現在タウンジーという街に住んでいる鈴木亜香里です。タイトルの「ヤウッカマー」はミャンマー語で義母、姑という意味。なんとこの春、私の一時帰国にあわせて、義母が日本に初上陸! 義母が日本に持ち込んだ「二つのもの」を中心に、その爆裂ぶりをレポートします!

ナンバー4アンクルの依頼とは?



「日本に行くなら、修理してきてほしいものがある」
 旅行前にそんな連絡が入り、義母に送られてきたのは、真ん中で二つに折れたゴルフクラブでした。依頼主は“ナンバー4アンクル”。義母の兄弟姉妹9人中、4番目のおじさんです。
「こんなの修理なんて無理だから、持って行くな!」
「修理するより、新しいのを買ったほうがいいから!」
「日本は、修理の手間賃が高いんだから!」
 夫も私も全力で止めたのですが、義母は聞く耳持たず。「ニーラーウーのお父さんに見せる!」と言い張って、折れたクラブをスーツケースに入れたのでした。
 ニーラーウーとは私の呼び名で、父はダンロップに勤めています。以前、父が夫にゴルフクラブのセットをプレゼントしたことがあるので、義母は、父に頼めば何とかなると考えたのでしょう。
 しかし、クラブを見た父のコメントは……。
父「使っている人がヘタなんだな。プレーがうまくいかずに、投げて折ったんだ。クラブは1本違うとダメだから、セットで買いなおしたほうがいいよ」
私「いや、そこまでの気はないみたい」
父「じゃあ、中古なら1本3〜4万円だから、買うか?」
私「飛行機に乗るとき、セットなら預けられるけど、1本だけだと、どうやって持って帰ればいいのかわかんないよ」
父「そうだな。凶器に見なされるかもしれないから、修理しても、機内に持ち込めないかもしれないな」
私「だよね。やっぱり、修理は無理だって伝えるよ」
 この時点で、折れたクラブは日本で処分すると思いますよね? しかし! 「じゃあ、持って帰ってきて」とナンバー4アンクル。「じゃあ、持って帰る」と、スーツケースに戻した義母。
 ナンバー4アンクルは手広く事業をやっているお金持ちなのに、今回の言動はまったくの謎。何に使うのかわからないドローンを、15万円も出して買ったんだから、ゴルフクラブも買えばいいのに!

ドアップの自撮り、多すぎ!



 今回、義母が日本に持ち込んだのは折れたゴルフクラブともうひとつ、iPadです。1年ほど前にゲットして以来、いつも持ち歩いて、写真を撮ったり、「ウィチャット」で親戚とやりとりしたり。ウィチャットとは、中国版のLINEみたいなアプリです。
 今回はもちろん、iPadで写真爆撮りの旅!
 日本初体験の義母を、最初に案内したのはお花見です。日程的に東京の桜は終わっているだろうと、事前にインターネットで開花情報を調べた偉い嫁! そして、長野県の諏訪方面へ行くお花見ツアーを予約しておいた、できた嫁!
 満開の桜に感動した義母が、その写真を撮りまくるのは、わかります。しかし、義母の爆撮りはそんなレベルじゃあない!
 花見の朝、家から駅まで、人の家の庭に咲いている花を撮りまくり。そして、ツアーバスの中で自撮りドーン! 桜の下でも自撮りドーン! 駐車場に並んだ観光バスの写真まで!
 お花見のときだけじゃなく、スカイツリーでも新幹線でも、ディズニーシーでも、スーパーマーケットでも普通の道でも、自撮り自撮り自撮り! そのほとんどが画面を覆いつくすドアップなので、あとで見ても、どこで撮ったのかわからない(笑)。オマケに、義母の大きなサングラスには、iPadが反射して写り込んでるし!
 ちなみに、観光バスの写真は「こんなにいっぱい観光バスが集まっているところを、息子に見せたい」とのこと。息子とは私の夫で、旅行代理店のオーナーなのです。
 さて、私たちが日本に来たころ、たまたま夫の従妹一族も日本へ観光旅行に来ていました。ウィチャットでやりとりしながら、彼らはお花見をしていないと聞いた義母は一言、「もったいないな」。それくらい、満開の桜に感動したようです。


 

義母、日本の老人ホームに入りたがる



 今回の旅行では、三重や京都など西の方面へも行きました。
 その移動で新幹線に乗る際、「富士山が見えるよ」と教えてあげたのですが、あまり期待していなかったようです。というのも、諏訪から見た富士山は、あまりに遠くて小さかった。スカイツリーに上ったときは、天候が悪く見えずじまいだったのです。
 しかし、車窓から見えたときに教えてあげると、まだ遠いところから撮りまくりスタート。そしてだんだん近づいてくると、その大きさに大感動! 見えてよかったね〜、お義母さん。
 三重に行ったのは、老人ホームに住んでいる祖母に会うためです。その老人ホームを見た義母は、こんなことを聞いてきました。
義母「ここは、いくらで入れるの?」
私「年金で入ってるから、月に20万円くらいかな」
義母「それで食事とリハビリまであるなんて安い! こんな施設がヤンゴンにあったら、私も入りたい!」
 ミャンマーの高齢者施設は、寄付で運営されているものしかなく、身寄りのない貧しい人だけが対象なのです。
 もちろん、施設の写真も爆撮り。親戚に送って、あれこれ説明していました。
 京都ではお寺や神社も回ったのですが、夫の一族は「パンデー」と呼ばれる中国系ムスリム。「私はお祈りできないけど、入っていいのかな?」と心配していた義母でしたが、私だって結婚するとき改宗してるし! 「大丈夫だよ。観光だし、日本人は絶対に何も言わないから」という私の言葉に安心して、金閣寺で自撮りドーン! 清水寺でも自撮りドーン!
 そして、息子に見せるのだといって、都おどりや金閣寺のパンフレットも撮影したのでした。
 

世界を旅するゴルフクラブ



 さて、旅行といえばお土産です。留守番の夫にリクエストを尋ねたところ、「ホンダが発売した、歩けるロボット!」。そんなの発売直後で高価だろうし、どこに売ってるのかわからないし、壊れたら修理もできないし! かなり本気のようでしたが、却下。結局は、ゴルフシューズに落ち着きました。
 そうしたら、靴屋の前を通るたびに義母がいちいち反応して大変! スニーカーを見ると「これがいい!」と言いながらお店に入っていくのです。そのたびに「普通の靴屋には、ゴルフシューズは売ってないから」と、引き留めていたのですが、あるとき、義母が反撃してきました。
「ゴルフの靴を普通に履いてもいいって、お店の人が言ってたわよ」
 だからぁ、いいのかもしれないけど、夫がほしいのはスニーカーじゃなくて、ゴルフシューズなんだってば!
 というわけで、帰国の前日、ゴルフシューズを買うためにゴルフショップへ。そのとき何気なく、折れたクラブの修理費用を尋ねてみると、「軸はものによるけど5000円くらい、手間賃は1000円くらい」とのこと。あら、思いのほか安い。
 ただ、軸を探すのに時間がかかるというので、修理は依頼せず。手間賃の件は気まずいので内緒です(苦笑)。
 そして帰国後、改めて義母がナンバー4アンクルに、クラブは修理できなかったことを伝えると、こんな返事が!
「アメリカに留学している息子に頼んで、あっちで修理してもらう」
 どう見ても安物のクラブが日本に行ったり、アメリカに飛んだり。ナンバー4アンクルの価値観、わかりません!

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地球市民の会ミャンマー駐在員

鈴木亜香里

1985年生まれ。東京外国語大学ビルマ語専攻卒。コンサルティング会社勤務を経て、佐賀県の認定NPO法人「地球市民の会」ミャンマー駐在員に。南シャン州のタウンジーという町に暮らし、農業支援、教育支援、地域開発、環境保護などのプロジェクトを行う。公的活動の一方で、2010年、現地で知り合った中国系ミャンマー人のイスラム教徒と結婚、自らも改宗してイスラム教徒となる。13年末、長男を出産。なお、現地では中国系イスラム教徒は「パンデー」と呼ばれ、特別なコミュニティーを形成している。

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