連載コラム

2016/10/28FREE

ヤウッカマー、料理教室の講師になる!

子連れ・ババ連れ帰国旅行4

亜香里のミャンマー嫁入り日記

鈴木亜香里
構成・文/井下優子

 ミンガラーバー! こんにちは! 中国系ミャンマー人と結婚して、現在タウンジーという街に住んでいる鈴木亜香里です。タイトルの「ヤウッカマー」はミャンマー語で義母、姑という意味。この春、私の一時帰国にあわせて、日本に初上陸した義母。その爆裂ぶりを暴露するシリーズの最終回は、義母と“食”のバトルを中心にレポートしま〜す!

義母VS食べ放題ビュッフェ、軍配は?



 旅の楽しみは、何といっても食べることですよね!
 夫の一族は「パンデー」と呼ばれる中国系ムスリムで、ハラル食以外はNGです。ハラル食とは、イスラム教で許された食べもののこと。イスラム教が豚肉を禁じていることは有名ですが、たとえば鶏肉も、ムスリムが絞めて、お祈りをしたものしか口にしてはならないのです。
 私は結婚を機に入信しましたが、日本の旅行中にハラル食は無理。義母にそう伝えたところ、「まあ、大丈夫でしょ」と。一族そろって、ゆる〜いムスリム(笑)。
 というわけで、義母も日本の食事を目いっぱい楽しみました。なかでも圧巻だったのが、食べ放題のビュッフェ。何が圧巻だったかは、説明するまでもありませんよね(笑)。
 戦いの場は、都内でも一番人気と評されるホテル。実家の家族も参戦です!
 私は重たい洋食は控えめにして、デザート全種制覇! 父と妹はとにかくローストビーフ狙い! そしてお義母さんは?
 1皿目は洋食山盛り! 2皿目はパン全種! 「あちゃ〜っ、食べ放題の負けパターン……」と思いきや! その後もおかわりを繰り返し、「いい加減、もう無理やろ〜」と、私と妹が話してるそばからデザート山盛り! その量が1人分にしてはあまりにも多いので、「みんなの分は持ってこなくていいから!」と注意したのは私の早とちりで、見事に完食! もちろん仕上げは、パンとバターをお持ち帰り(笑)。チッチ(長男の愛称)のお腹が空いたときのためだそうです。


 さすがにその日の夕食はパスした義母ですが、過体重でヒザが痛いことを忘れているのか?
 さて、義母は、実家で母が作る料理にも興味津々。「脂が少ないし薄味だし、健康的でいいわね!」と大絶賛で、特にサラダを気に入っていました。
 ミャンマーでは、ほとんど生野菜を食べる習慣がありません。サラダのようなものもありますが、塩味が濃く脂っこいのです。スーパーマーケットでドレッシングを購入し、帰国してから作るのだと張り切る、健康オタクの義母なのでした。
 外食もあれこれ楽しみましたが、残念だったのはラーメンを食べさせてあげられなかったこと。多くのラーメン屋さんはトンコツを使っていますからね。それを知りつつ、こっそり食べに行った私を許して、神様!

日本語ができない高齢者と幼児を置き去り?



 今回の旅行では、山口県の門司と九州の佐賀にも行きました。
 門司では私の仕事があり、その間、義母とチッチには九州鉄道記念館で待ってもらうことに。いろんな電車に乗ることができて、チッチが喜ぶだろうと思っての選択です。ところが、怖がって全然乗らなかったらしく、連れて行った意味なし。しかも午後5時閉館なのに、仕事が5時半までかかってしまい、迎えに行ったときには追い出されていた2人。まったく日本語ができない高齢者と幼児、まさかの置き去り事件が勃発していたのでした〜!
 さて、鉄道記念館で電車に乗らなかったチッチは、何をしていたのか? ひたすら走り回っていたそうです。
 公共の場で小さな子どもが走り回ると、日本では必ずといっていいほど「安全管理」を楯に注意しますよね。鉄道記念館ではどうだったのかわかりませんが、最近のチッチはよく走り回るので、今回の旅行でも何回注意されたことか!
 たとえばビュッフェでは「床が滑って危ないので、気をつけてください」。ディズニーシーでは「お子さんをちゃんと見ててください」。はとバスでも、ちょっと通路に座っただけで、「危ないので抱っこしててください」。
 あ〜もう、「迷惑だからやめてください」ってストレートに言えばいいのに! そう思う私は、ミャンマー脳になりつつあるのか?

義母の料理教室、参加者は作り方わかった?



 佐賀に行ったのは、私が所属するNPO法人で帰国報告会を行うためです。その際、法人への協力者が豪華なお刺身を食べさせてくれたり、レンタルの着物を着せてくれたりと歓待を受け、大喜びの義母! 赤い着物姿の写真をフェイスブックのプロフィールページに設定するほどご満悦でした。
 さて、日本での 義母の“食”バトルは、単に食べただけではありません。せっかくなので、帰国報告会と同時にミャンマー料理の『ココナッツヌードルを作ろう会』を開催。義母が料理教室の講師を務めたのです!
 定員15人がすぐに埋まる人気ぶりで、義母も大いに張り切ったのですが、案の定、張り切り過ぎ(笑)。
 料理教室は1時間しかないので、前日の下準備を義母に任せておいたら「アカリちゃん、やばい!」と、スタッフから耳打ち。見ると、下準備を通り越して進めていたので、慌ててストップをかけました。
 そして本番。想定していたのは、私が作成したレシピを配布して、簡単な説明の後、「では、みなさん作ってください」という流れです。ところが義母は「ショウガを入れて」「ココナッツミルクを入れて」と言うだけで、分量の指示なし。参加者は3班に分かれていたのですが、「お義母さん、味みてくださ〜い」とみんなに呼ばれ、ほとんど義母が仕上げるというアバウトな料理教室となりました。


 佐賀で義母が初体験したのは、料理教室の講師だけではありません。私たちが滞在した夜、熊本地震が起こったのです! ミャンマーも地域によっては地震がありますが、義母はこのときが大地震の初体験。よほど怖かったのでしょう、起き出してイスラム教のお経を唱えていました。
 地震の影響で参加者は10人に減り、作り方がわかったようなわからないような料理教室でしたが、とりあえず成功としましょう。美味しいとみんな食べ過ぎて、引き続き行った私の報告会では眠たそうでしたから(笑)。

外国人だと思われたくない、そのワケは?



 さて、旅行前、「日本では何を着ればいい?」と騒いでいた義母ですが、結局はミャンマーから持ってきた「村人スタイル」で通しました(笑)。
 そうそう、服といえば、料理教室では私と一緒にミャンマーの民族衣装「ロンジー」を着ようと持参していたのですが、すっかり忘れていた2人(笑)。ビュッフェに行く日の朝、そのロンジーにアイロンを当てながら、「今日、これを着たらヘンかな?」と尋ねるので、「着たら外国人だと思われるね。でも、ヘンじゃないから着れば?」と答えたのですが、結局、着ないまま……。
私「なんで着なかったの?」
義母「だって、外国人だとバレて、ぼられたらイヤだから」
 いやいや、ここは日本ですから!
 というわけで、今回は日本での義母の爆裂ぶりを紹介してきましたが、実家の母から「お義母さんよりあんたのほうが爆裂。姑に対して全然気を遣ってないじゃないの!」と苦言が。
 もちろん私だって、心の中では感謝してますよ。2人目の子が入った大きなお腹を抱えて帰国できたのは、何といっても義母のおかげ。そして、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と言えるようになったチッチと両親を会わせてあげることができたのも、義母のおかげ。だからお義母さん、2人目の出産のときもよろしくね〜!

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地球市民の会ミャンマー駐在員

鈴木亜香里

1985年生まれ。東京外国語大学ビルマ語専攻卒。コンサルティング会社勤務を経て、佐賀県の認定NPO法人「地球市民の会」ミャンマー駐在員に。南シャン州のタウンジーという町に暮らし、農業支援、教育支援、地域開発、環境保護などのプロジェクトを行う。公的活動の一方で、2010年、現地で知り合った中国系ミャンマー人のイスラム教徒と結婚、自らも改宗してイスラム教徒となる。13年末、長男を出産。なお、現地では中国系イスラム教徒は「パンデー」と呼ばれ、特別なコミュニティーを形成している。

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