連載コラム

2017/3/30FREE

JKビジネスで補導の10代、「性行為やむを得ぬ」?

仁藤夢乃“ここがおかしい”第15回

バカなフリして生きるのやめた

仁藤夢乃


ある新聞記事に感じた違和感



 2017年2月17日、朝日新聞に「JKビジネス 安易な動機 金銭目的・性行為 抵抗感薄く」というタイトルの記事が掲載された。内容は以下の通りである。
「警視庁は、女子高生による接客などを売りにする『JKビジネス』で勤務経験がある少女たちへのアンケート結果を公表した。家庭や学校に不満がない『普通の女の子』たちの多くが、金銭目的でJKビジネスに関わっていた実態が明らかになった。
 少年育成課は、昨年6〜7月に児童福祉法違反などで摘発した都内のJKビジネス2店舗に勤務した15〜17歳の少女42人に聞き取り調査を行った。いずれも警視庁が補導し、現役高校生が7割に上った。
 42人のうち、約半数が勤務を通じて、客との性行為の経験が『ある』と回答。見知らぬ客と性行為をすることについて『場合によってはやむを得ない』と回答した人は28%にのぼり、抵抗感の希薄さが浮き彫りになった。
 家庭での生活に満足していると答えた人は全体の66%を占め、学校生活に満足している、とした人も全体の33%いた。
 勤務のきっかけは、友人からの紹介が66%と最多。7割は、家庭で小遣いをもらっていなかった。お金が必要な理由では、アイドルの追っかけなどでライブチケットを購入するための遊興費や、洋服や化粧品を買うため、との回答が多かった。1カ月あたりの勤務収入は、10万円未満が最多だが、50万円以上の収入を得ていた少女も1割いた。
 同課は『安易な考えで、ごく普通の子がJKビジネスで働いている。ストーカーや性犯罪の被害に遭う可能性もあり、楽観的にとらえないで欲しい』と注意を呼びかける。今回の調査結果を教育機関やPTA組織に提供し、生徒指導に役立ててもらう予定だという」(17年2月17日、朝日新聞朝刊)
 私はこの4年間で、JKビジネスに関わった120人以上の中高生と関係を結んできた。そうしてJKビジネスの実態についてまとめた『女子高生の裏社会』(14年、光文社新書)では、JKビジネスに関わる少女は三つの層に分けられると書いた。「貧困層」(家庭が経済的に困窮している)、「不安定層」(経済的には困窮していないが、家庭や学校の人間関係などに不安を抱えている)、「生活安定層」(家庭や学校での生活にも満足している)であり、どの層も3分の1程度ずつ存在する。警察の発表も、それに近い結果であると思った。
 朝日新聞の記事ではこの発表を受けて、少女たちの「抵抗感の希薄さが浮き彫りになった」とまとめており、私はこの記事のまとめ方は印象操作だと思った。デジタル版のタイトルは「JKビジネスで補導の10代、『性行為やむを得ぬ』3割」となっている。
 記事では「家庭での生活に満足していると答えた人は全体の66%を占め、学校生活に満足している、とした人も全体の33%いた」とあるが、家庭や学校が安心できる、帰りたいとか行きたいと思える場所だと答えた人が「66%や33%しかいない」ということにこそ、目を向けるべきではないだろうか。少女たちと客との性行為も、相手が「見知らぬ客」でなくても問題であり、常連客もたくさんいるのに「見知らぬ客」と限定していることにも違和感があった。

本当に目を向けるべきところ



 この記事が掲載された日、女子高校生サポートセンターColabo(コラボ)のシェルターに宿泊していた16、17歳の女子高生3人がこう話していた。
「警察発表を鵜呑みにしてどうすんの? (見知らぬ客との性行為について)『場合によってはやむを得ない』『性行為やむを得ぬ』なんて高校生が言うわけないじゃん(笑いが起きる)、そんな言葉で勝手に語らないでほしい。怖くて体固まったり断れなかったり、抵抗できなかった理由とか背景があるかもしれないし、ウチはそうだった」
「もし補導されて、やった理由を聞かれたら『お金が欲しかったから』って私だって言うわ。何に使ったのか聞かれたら『遊び』って言う。家が生活保護で大変でー、とか、親の彼氏に暴力振るわれててお金取られますとか、そんな話できないし、生活に満足してるかと聞かれたら『幸せです』って言うし、本当のことなんて言ったらどうなるか分からないから言わないわ」
「警察で『家に帰りたくないです』なんて言えるわけないし、言ったら保護されて嫌な目に遭うかもしんないし」
「50万も稼げるなんて子は見たことないし、そんなに稼げる仕組みじゃないから、その子は学校行かずに毎日出勤して売春し続けてたんじゃないかな。それだけの理由があったんじゃないの?」
 中高生時代にJKビジネスなどで性被害に遭ったり、抵抗できない状況で売春させられたり、レイプされたりした経験を持つ彼女たち。ある高校1年生は「女の子を追い込むようなこと書いてどうすんの?」と、大人たちに対してあきらめたような表情でつぶやいた。この記事のように、子どもの「抵抗感の希薄さ」を問題や原因にすることは本質を見失わせる。
「場合によってはやむを得ぬ」の「場合」には、断れなかったり抵抗できなかったりした場合、強制された場合、お金に困っていた場合、他の仕事への就労が難しい場合、福祉や教育からこぼれ落ちて行き場がなかった場合、他に頼れる人がいなかった場合など、いろいろな「場合」が含まれている。
 目を向けるべきは、「やむを得ぬ」と言わせてしまう状況があることであり、10代の少女たちにはそこで働くまでの背景や働き続ける理由があること。困難を抱えていない子たちまでも、気軽な気持ちで取り込む「手口」や「組織」があること。JKビジネスは「売りたい大人」と「買いたい人」の需要と供給で成り立ち、そこで「子どもが商品化」されていること。買う側の存在やその暴力性。加害者には大学生などの若者も多いこと。被害に遭った子どものトラウマとケア。危険からの身の守り方や、困っている友だちがいたらどうしたらいいか教えたり、加害者にならないための教育やケアがないこと、などである。
 さらにはJKビジネスが成り立ち、「普通」の少女も働く大前提として、女子高生に性的な価値や高い価値を見出すような社会があること。女子小中学生の性ですら「萌え文化」などといって消費されていること。女性の性を商品化し、それを買うことが当たり前のようになっている男性や、お金を介することで子どもへの暴力を正当化しようとする大人がたくさんいることなど、これらを「大人側の問題」として本気で考えないといけないと思う。

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社会活動家

仁藤夢乃

1989年、東京都生まれ。中学時代から東京・渋谷で家出生活を繰り返し、高校を2年で中退。後に恩師となる予備校講師より知遇を得て、農業・国際貢献活動に従事。2009年、明治学院大学社会学部に進学。在学中から高校生に目を向けた活動を始め、卒業後の11年に一般社団法人 女子高校生サポートセンターColaboを設立、代表理事をつとめる。第30期東京都青少年問題協議会委員。著書に『難民高校生』(英治出版)、『女子高生の裏社会』(光文社新書)。

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