連載コラム

2017/8/17FREE

世界最大の格ゲー大会に行ってきた!

第1回

プロゲーマー百地裕子 毎日がまるでストリートファイター

百地裕子

Evolution 2017とは?



 こんにちは、〈チョコブランカ〉です。
 私は「ストリートファイター」という格闘ゲームをはじめ、さまざまなジャンルのゲームに関する活動をしているプロゲーマーです。スポンサーチームに所属して国内外の大会に出場するほか、新作ゲームタイトルのプロモーション、ゲームの楽しさや魅力を伝えるイベントの企画・運営、未来を担う若手の育成などを行うことが主な仕事です。
 連載第1回目は、2017年7月14〜16日(現地時間)にアメリカのラスベガスで開催されたゲーム大会「Evolution Championship Series(EVO) 2017」をリポートしたいと思います。EVOについては“世界最大規模の格闘ゲーム大会”として日本のインターネットニュースなどでも紹介されているので、名前ぐらいはご存じの人がいるかもしれません。今大会には63カ国から約6800人、日本からも300人を超す選手が各タイトルにエントリーしました。
 EVOは1996年から毎年開催されている大会ですが、とにかくアメリカでは複数のテレビ局が決勝戦を中継したり、「ストリートファイターV」というタイトルだけで数千人がエントリーするほどの熱狂ぶり。優勝者には文字通り、「世界最強格闘ゲーマー」の称号が与えられます。ちなみに私がプレーしている「ストリートファイターV」はEVOの中でも最大のエントリー数を誇る人気タイトルで、他には「大乱闘スマッシュブラザーズDX」「大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U」「鉄拳7」「インジャスティス 2」「ギルティギア Xrd REV 2」「アルティメット マーベル VS. カプコン 3」「ブレイブルー セントラルフィクション」「ザ・キングオブファイターズ XIV」などのタイトルがあります。



小さなゲームイベントから出発



 このように今日では世界中が注目するEVOも、もともとはアメリカの格闘ゲーム愛好団体が主催するゲームイベントで、スタート時には参加者数40人、観客も数百人という規模でした。やがてインターネットやテレビを通じて知名度が上がると、視聴率を目当てにスポンサーが集まり、放映権が売れるようになります。参加費以外でも多くの利益が上がってビジネスが生まれ、現在のような巨大な格闘ゲームイベントに成長し、アメリカのeスポーツの発展を支えたのだと思われます。
 eスポーツには、レーシングゲーム、サッカーなどのスポーツゲーム、パズルゲーム、トレーディングカードゲームなど、格闘ゲーム以外にもさまざまな競技種目があり、試合形式も1対1、チーム対抗など多様です。世界的な大きなくくりで見ると、格闘ゲームは他の競技種目に比べてニッチな存在になってしまいます。しかし、それを忘れてしまうほどの熱量と、多くの参加者(選手や観客、スタッフを含め)を、この世界最大規模の格闘ゲームイベントであるEVOで体感することができます。
 まだ日本ではあまり情報が流れておらず、語られていないことも多いのですが、冒頭にも書いた通りEVOは「お祭り」的な要素も多分に持っていて、単に世界一のゲーマーを決める場というだけではありません。年に一度、世界中からゲームファンが集まり、好きなタイトルのトーナメントにエントリーします。参加費は会場代を含めてプロ・アマ問わず1人約1万円で、その一部が勝者の賞金に上乗せされるというシステムです。エントリー数が多ければ多いほど、優勝賞金がアップします。
 ですから参加者はプレーヤーとしての腕前に関係なく、お祭りを盛り上げる気分で、進んで参加費を払ってトーナメントに参加します。今大会の「ストリートファイターV」の優勝賞金は約3万6000ドル(約400万円)、全種目を通じての賞金総額は約26万ドル(約2900万円)に達しました。



お祭り気分の参加者も多数



 またEVOの参加者の多くは「日頃、純粋にゲームを“趣味として”楽しんでいる人々」なので、彼らのお目当ては当然ながらトーナメントでの勝利だけではありません。観光地として有名なラスベガスですから、ホテルは豪華だし、プールはもちろん、ショッピング、カジノなどのアミューズメント施設も充実しています。さらに会場内には、ゲーム関連グッズメーカーや、ゲームファンのコミュニティーがブースを出展していて、日本のコミックマーケット(コミケ)のようにオリジナル物販のコーナーもあります。それらを目当てに参加する人や、ラスベガス観光を兼ねて……といった人も多くいます。まさしく「祭典」ですね。
 日本からラスベガスへは飛行機で約13時間。マッカラン国際空港に到着したら、タクシーで宿泊先でありEVO 2017の会場でもあるマンダレイ・ベイホテル(Mandalay Bay Resort and Casino)へ。そうしてホテルに到着したらチェックインして一旦休憩し、翌日からの大会に備えます。
「ストリートファイターV」に関していえば、3日間かけてトーナメントが行われます。最初の2日間で予選を行い、最終日の本戦へと進む8人を決めます。今回、「ストリートファイターV」部門にエントリーしたのは総勢2625人。そこから最終日に残れるのはたった8人です。
 1日目は「プール」と呼ばれる予選を通過するために戦います。プールはプロもアマチュアも、上級者も初心者も女性も男性もごちゃまぜで戦います。ルールはダブルイリミネーションといって、2敗した時点で敗退となる方式なので、敗退するまで全力で戦い抜きます。大会によっては、一度でも負けたら敗退となるシングルイリミネーションを採用しているところもあります。

ヒーローが生まれる大会



 さてこのEVOですが、私の夫であり、同じ北米のプロチーム「エコーフォックス(Echo Fox)」に所属する〈ももち〉も過去に優勝した経験があります。今回の17年大会も、私たちのチームメイトであるプロゲーマーの〈ときど〉選手が、「ストリートファイターV」部門で劇的な優勝を飾り、世界一の栄誉を獲得して日本でもニュースになりました。
 東京大学卒のプロゲーマーとしても有名になった〈ときど〉選手は、圧倒的な反応速度と精確な入力で今シーズンを独走するアメリカの若き絶対王者〈Punk〉選手に前日の試合で負けて、ルーザーズトーナメント(敗者復活戦)に落とされていました。しかし彼はそこから日本人選手との接戦を勝ち上がり、再び決勝で〈Punk〉選手と対戦。

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プロゲーマー

百地裕子

1986年、兵庫県生まれ。中京大学体育学部卒業。2008年より対戦格闘ゲームを始め、国内大会でトップゲーマーに勝利して知名度を獲得。愛称は〈チョコブランカ〉。11年にプロゲーミングチーム「Evil Geniuses」(本拠地・アメリカ)からスカウトされ、日本人初の女性プロゲーマーとなる。17年には北米のプロゲーミングチーム「Echo Fox」に移籍。夫は同チームに所属するプロゲーマーの〈ももち〉こと百地祐輔。世界初の現役プロゲーマー夫婦として、15年に株式会社忍ismを設立。「ゲームと人を繋げる」をモットーに、世界で活躍できる後進の選手育成、ゲームコミュニティーを盛り上げるためのイベントの企画・運営に携わる。

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