連載コラム

2015/11/30FREE

名医から2度もがん誤診体験

ニュースコラム時代を読む風

東西南北

 杉村隆国立がんセンター名誉総長は世界で初めて化学物質で動物に胃がんを作ることに成功、日本のがん研究に新しい局面を切り開いた第一人者である。しかし、皮肉なことに同センターの医師からがんと誤って診断された経験が2度ある。
 最初は47歳のとき、右の肋骨に不快な鈍痛を感じ、膵臓(すいぞう)の炎症が疑われた。同僚が膵臓がんと診断、即刻手術をすべきとの意見も出た。妻に「早く切った方がいい」と助言した医師もいたとあとで知った。結局、「しばらく様子をみよう」ということになり、何事もなく済んだ。
 12年後に総長に就任してまもなく気管支炎になり、胸部X線写真から肺がんが疑われて入院した。その写真をみた前任の総長も、別人のものと勘違いして、「がんが比較的太い気管支をふさいでいる」「これだと3カ月か6カ月程度か」と余命期間まで触れた。
 気管支ファイバースコープの開発者でもある内視鏡部長がくわしく検査して、肺がんでないことがわかり、症状も1週間で消えた。その翌年、東京大学で腎結石破砕術を受けたときはうまくいかず、改めて外科手術をした。このときも肝臓がん、腎臓がんのうわさが流れた。
 というのも歴代総長の6人中4人が胃がん、直腸がん、肝臓がんなどで亡くなっている嫌なジンクスがあるからだ。それにしてもこれは「がんの診断はその道の名医も間違う」という教訓で、セカンドオピニオンが欠かせないようだ。
 杉村医師の著書「がんよ驕るなかれ」(岩波現代文庫)によれば、がんは遺伝子の変化によるもので、その遺伝子による組織の病変があった場合でも10年たってそれ以上に発展せず、手術の必要がないこともある。しかし、がん細胞と確認され、しなくてもいい手術をしてしまうこともある。
 遺伝子治療が進めば、がん抑制遺伝子をがん細胞のなかに入れてやり、がん細胞をもとの細胞に戻す治療ができる。杉村医師はいまその可能性に賭けた研究に取り組んでいる。

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東西南北

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