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2017/3/17NEWFREE

サッカー2018年ワールドカップアジア最終予選後半戦スタート

楽観できぬ本戦出場、選手の選択が運命を握る

時事オピニオン

大住良之

 日本代表にとってこの20年間で最も緊張を強いられる半年間が始まる。

予選上位2位以内が至上命題に



 FIFAワールドカップ2018ロシア大会のアジア最終予選。6大会連続出場へ向け、ひとつの間違いも許されない5試合が、3月23日のUAE(アラブ首長国連邦)戦から、9月5日サウジアラビア戦まで行われる。
 ロシア大会のアジア最終予選は12チームが出場、6チームずつ2組に分かれてそれぞれホームアンドアウェーの2回戦総当たり(全10節)を行い、両組上位2位までが出場権を獲得する。
 3位になると、両組の3位同士で「AFCプレーオフ」を行い、それに勝っても、ワールドカップの出場権を得るには、さらに北中米カリブ海地区の4位との「最終プレーオフ」で勝たなければならない。このところワールドカップでは常にアジア勢を上回る成績を残している北中米カリブ海勢だけに、何としてもプレーオフに回らずに出場権を確保したいところだ。
 そのポイントは2点ある。

カギ握る中東勢とのアウェー戦



 第1のポイントは「中東勢とのアウェー対策」だ。
 昨年(2016年)9月に始まったアジア最終予選。11月までに行われた前半戦5試合は、バヒド・ハリルホジッチ監督にとって非常に苦しいものだった。UAEを埼玉スタジアムに迎えた初戦をいきなり1-2で落とすというショッキングなスタート。5日後にタイとアウェーで戦って2-0の勝利を収めたが、10月には再び埼スタでイラクを相手に苦戦。後半追加タイムにMF(ミッドフィールダー)山口蛍が劇的な決勝点を決めて2-1で勝ちきった。そしてオーストラリアとはアウェーで守備的に戦い1-1の引き分け。前半戦最後のサウジアラビア戦を2-1で勝ってなんとか2位で前半戦を終えた。
 5試合の成績は3勝1分け1敗。だが順位表を見れば明らかなように1位サウジアラビアから4位UAEまではほんのわずかな差しかなく、「出場圏内」などという表現からはほど遠い状況だ。「過去20年間で最も緊張を強いられる半年間」というのは、今後はひとつのミスが命取りになりかねない状況だからだ。


 しかも昨年の「前半戦」5試合には、ホームで3試合を戦うというアドバンテージがあった。本来なら、アウェーのオーストラリア戦を引き分けるだけの4勝1分け、勝ち点13は欲しかったところだ。後半戦は逆にアウェーが3試合。3月23日のUAE戦、6月13日のイラク戦、そして9月5日のサウジアラビア戦である。中東でのアウェー3試合を残しているという事実は重い。
 3月23日のUAE戦は、内陸のアルアインで行われる。UAEは2次予選から最終予選にかけてワールドカップ予選のすべてのホームゲームをアブダビで開催してきたが、日本戦だけアルアインに移した。昨年9月の対戦では先発の11人がアルアイン・クラブの所属だった。「ホームの利」をさらに生かそうという狙いだ。
 3月のアルアインはまだ「猛暑」とは言えないが、残りの2試合は、相手だけでなく暑さも大きな敵となる。6月のイラク戦は、イラン国内で行われる可能性が高い。9月のサウジアラビアほどではないが、6月のイランも暑い。アウェーの不利だけでなく、暑さとの戦いを強いられるのが、この「後半戦」だ。



主力のコンディション不良が不振に直結



 そして第2のポイントが、コンディション重視の選手選考だ。
 ハビエル・アギーレ前監督の契約解除を受けてハリルホジッチが日本代表監督に就任したのが15年の3月。以後、昨年6月のキリンカップまでは、試合内容、結果ともまずまずだった。だが昨年秋には非常に苦しい状態になってしまった。その原因は、主力選手、とくに攻撃陣のコンディション不良だった。
 日本代表の主力は、アルベルト・ザッケローニ監督時代の11年1月のアジアカップ優勝以来、昨年まで大きくは変わっていなかった。そしてその中心は、大半がヨーロッパ主要国のクラブで活躍していた。
 GK(ゴールキーパー)川島永嗣(現在はフランスのFCメス所属)、DF(ディフェンダー)吉田麻也(サウサンプトン=イングランド)、DF長友佑都(インテル・ミラノ=イタリア)、MF長谷部誠(フランクフルト=ドイツ)、MF香川真司(ドルトムント=ドイツ)、FW(フォワード)本田圭佑(ACミラン=イタリア)、FW岡崎慎司(レスター=イングランド)らである。
 これらの選手のうち、GK川島は移籍で出場機会を失い、MF香川、FW本田、FW岡崎は、昨年夏に始まった新シーズンでは出場機会を激減させてしまった。上記のうち所属クラブで完全にポジションをつかんでいるのはMF長谷部ただひとり。長友も出番が激減し、吉田も半分以下という状況である。とくに攻撃を牽引してきた本田、香川、岡崎の3人がコンスタントな試合経験を積んでいないのは、日本代表にとって大きな打撃だった。
 サッカーは基本的には週に1試合。多くても週2試合程度で、他の日はトレーニングで過ごす。しかし試合勘や試合での体力といったものは、試合、それもタイトルをかけた公式戦でなければ身につかない。試合に出られない状況が続くと、勘は鈍り、体力も落ちてしまうのだ。

若手が躍動し甦ったサウジ戦



 9月のUAE戦、ハリルホジッチ監督はそれでも本田、香川、岡崎の3人を先発させ、前半11分に本田が先制点を決めたが、以後は攻撃に鋭さを欠き、後半9分までに逆転されると、それをひっくり返す力はなかった。
「彼らのコンディションが悪いのは明白だ。だが誰が代われるというのだ?」
 ハリルホジッチ監督はこの3人、とくに本田を深く信頼し、彼ら抜きで負けることを恐れた。それが10月のオーストラリア戦まで4試合続いた。その時期、ハリルホジッチ監督はこんな発言を繰り返した。
 だが11月、首位サウジアラビアを埼スタに迎える試合を前に、彼はようやく決断する。3人を全員先発から外し、右MFに久保裕也(当時はヤングボーイズ=スイス、現在はヘント=ベルギー)、トップ下にMF清武弘嗣(当時はセビージャ=スペイン、現在はC大阪)、左MFに原口元気(ヘルタ・ベルリン=ドイツ)、そしてワントップにFW大迫勇也(ケルン=ドイツ)という若い攻撃ラインを送り出したのだ。

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サッカージャーナリスト

大住良之

1951年生まれ。一橋大学卒。74年ベースボールマガジン社入社。78年「サッカーマガジン」編集長に就任。88年からフリーランスのサッカージャーナリストになる。著書に『サッカーの話をしよう1~6』、『新・サッカーへの招待』など多数。

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