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2017/7/7FREE

LGBT映画の祭典「レインボー・リール東京」を楽しもう!

1992年から続く東京国際レズビアン&ゲイ映画祭

時事オピニオン

東小雪
構成・文/石川敦子

「第26回レインボー・リール東京東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜」が、シネマート新宿(2017年7月8〜14日)と、青山のスパイラルホール(7月14〜17日)で開催されます。この映画祭は、セクシュアル・マイノリティーに関する映画を上映することで、多様性に寛容な社会をつくりたいという趣旨のもと、1992年から続いています。この映画祭を「特別なイベント」だと語る東小雪さんに、お話を伺いました。



多様性を祝う映画の祭典



 まず、この映画祭が92年から続いているというのは、すごいことだと思います。
 最初は「東京国際レズビアン&ゲイ・フィルム&ビデオ・フェスティバル」という名前で、中野サンプラザの小さな研修室で映画を上映したのが始まりだそうですが、その頃は社会の偏見が今よりもっと強かった時代です。何かいかがわしいイベントではないかと思われて、抗議の電話がかかってきたこともあったと聞いています。
 それでも毎年開催を続け、98年からは名称が「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」に変わり、2016年からは「レインボー・リール東京」という、同名のNPO法人が運営する映画祭となっていって、次第に、たくさんの企業が協賛してくださるようにもなりました。
 私自身は「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」にも愛着がありますが、現在の「レインボー・リール」という名前からは、レズビアンやゲイのほかにも、トランスジェンダーやバイセクシュアルをはじめ、あらゆる多様性を排除しないというメッセージもあるのかなと感じています。
 青山のスパイラルホールに、大きなレインボーフラッグが掲げられているのを見ると、毎年、とても誇らしい気持ちになるんです。こんな都会の大通りに、セクシュアリティーの多様性を祝う象徴の旗がきらめいている。これはLGBT当事者の方にとって、見どころの一つだと思います。

あたたかさも魅力!



――東さんにとっても思い出深い映画祭だそうですね。

 そうなんです。私は東京に来たのが09年で、それ以前は映画祭のことを知りませんでした。
 カミングアウトしたのが2010年の秋、20代半ばの頃。その少し前から、私らしく生きていきたい、だから勇気をもってカミングアウトするんだ、と思い始めたけれど、当時はまだLGBTという言葉も今ほど認知されていませんでしたし、周囲の人に受け入れられるだろうか、と心の中は不安でいっぱいでした。
 そんなときに、現在のパートナーの増原裕子さんに映画祭のことを教えてもらったんです。裕子さんは社会に向けてカミングアウトする前から、友達と一緒に映画祭に行っていたそうです。
 映画祭にはLGBT当事者も、そうでない方も集まって、一緒に映画を楽しんで、一緒に笑ったり泣いたりできます。垣根をなくしていく、超えていくことができる。そういう経験が私を励ましてくれたし、心の支えになりました。
 LGBTのお祭りとしては「東京レインボープライド」というパレードも毎年あって、仲間と一緒に街を歩くという経験から力をもらってきたんですけど、私は特に文化的なものが大好きなので、映画というカルチャーを通じてつながりができることにも大きな意味を感じています。
 上映館は大きな映画館ではないので、みんながぎゅっと集まって座るのも、一体感があっていいんです。上映前に流れるCMも、LGBTに肯定的な企業のものですから、「あ、この企業もLGBTフレンドリーなんだ」と知ることができるのを楽しみにしています。ロビーには協賛企業がブースを出していて、ノベルティーグッズを配っていたり、物販したりしていますから、早めに来場されるのがおすすめです。
 終わったあとにあたたかい拍手が起こる作品が多くて、会場が一つになりますね。お酒や飲み物を提供するブースもあるので、ロビーで飲んでいると知り合いに会って「いい映画だったね」とお互いに感想を話したり。裕子さんは、映画祭で大切なお友達と再会したこともあったそうです。

映画を通じて世界を考える



 また、いろいろな国の映画が上映されるので、他の国のLGBTの方たちの状況も知ることができたり、勇気づけられたりします。LGBTという切り口ですが、描かれているテーマは多様で、移民や人種の問題など、他のマイノリティーのことを考えるきっかけにもなりますし、他の国の文化も見えてきます。私はHIVをテーマに扱った作品(第20回上映、「あの頃、僕らは いま語られるエイズの記憶」)も映画祭で見て、知識が広がりました。さまざまな面から私を育ててくれた、大切なイベントです。
 ほとんどは日本で初めて公開される映画ですし、ここでしか見られない作品もありますから、映画ファンなら見逃せない、貴重な機会だと思います。私も毎年、公式サイトやパンフレットを見ながら「どれを見よう」と計画を立てるんです。1日3作品見る、なんていうコアな映画ファンも多いですし、11年には、私もかなりがんばって全作品を見ました。人気のある作品はすぐにチケットが売り切れてしまうので、当日券もありますが、早めに前売り券を購入するのがおすすめです。
 来日した監督さん、俳優さんのインタビューなどのイベントもあります。パンフレットは映画祭が近くなれば、上映館などで無料配布されますし、公式サイトでもチェックできますよ。
 大半は長編映画ですが、それだけではありません。今年は「QUEER×APAC〜APQFFA傑作選」と銘打って、アジア・太平洋地域の短編映画が6作品ピックアップされています。また、「レインボー・リール・コンペティション」では毎年、邦画の短編作品を募集していて、観客の投票でグランプリが決まります。

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LGBTアクティビスト

東小雪

1985年、石川県金沢市生まれ。元タカラジェンヌ。LGBT研修講師。企業研修、講演、テレビ・ラジオ出演、執筆など幅広く活躍中。テレビ「私の何がイケないの?」(TBS)、「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「ハートネットTV」(NHK Eテレ)、「みんなのニュース」(フジテレビ)、「モーニングCROSS」(TOKYO MX)などメディア出演多数。2013年、東京ディズニーシーで初の同性結婚式を挙げ国内外で話題に。2015年、渋谷区パートナーシップ証明書交付第1号。著書に『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』(2014年、講談社)、『ふたりのママから、きみたちへ』『レズビアン的結婚生活』(共著。ともに2014年、イーストプレス)、『同性婚のリアル』(共著。2016年、ポプラ社)『女どうしで子どもを産むことにしました』(共著、2016年、KADOKAWA)。ブログ「元タカラジェンヌ東小雪の『レズビアン的結婚生活』」を発信中。

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