同時に医療者同士の絆を感じながら、同じ仲間としての誇りを高め、そしてまた自分も医療を待っている患者のために頑張らなくてはならないと勇気をもらうのである。
後退させられるシリアへの医療支援
実は、私が参加する予定だった今回のシリア緊急派遣チームは、シリアに入国さえできなかったらしい。それどころか、現地では危険性が高まったため、ラッカ県やハサカ県といった北東部地域ではスタッフの一部を退避させ、活動の停止や縮小を強いられた。
内戦であろうが、国同士の対立であろうが、罪のない人々を巻き込む戦争はただちに中止すべきである。それを何度訴えようとも、それでも戦争を続けようというのならば、せめて傷ついた市民への医療活動だけでも認めるべきだ。2012年、車窓から見た美しいシリアは現在、人々の血と叫びと涙で埋め尽くされている。20代で地雷を踏んで両足を失った青年も、たったの4歳だった彼の娘も、その中でもがきながら生きているのだろうか。戦争に一切参加していない市民の家を、足を、家族を、人生を、命を奪っておきながら、医療活動さえ妨害するその先に、誰がどんな幸せを手に入れるというのだろうか。
夜間もトルコからの攻撃を受け、黒煙が上がるシリア国境の街、ラス・アルアイン(2019年10月16日)