まず最初に、藤本部長に、長い職務をみごとに勤めあげられましたことをお喜び申し上げ、長年の直属の部下として、仕事の上で授けられた数えきれないお教えに感謝したいと思います。
部長とのおつきあいは、それこそ長く、私がA社より当社に転職して以来のものであります。
移ったばかりのころの上司だった部長は、まだ若くてなにも知らない小生意気な私に対して、いろいろやさしくご指導くださり、気がまえだけは元気に見えても、周囲の状況もわからず、試行錯誤(しこうさくご)をしていた私を、そっと陰で支えてくださいました。
そして、えらそうなことをいっても、切手の正しい貼り方もわきまえなかった者に、それこそ、営業のABCから、辛抱強く、さとすように教えてくださいました。
私が今日、多数の優秀な部下の中から、こうしてまず最初にごあいさつさせていただけますのも、ひとえに部長のご訓導のたまものであります。
ご職務完遂の祝賀とはいえ、正直に申せば一抹のさびしさは禁じ得ません。藤本部長はそんな私に対して、先ほども、社業の今後の見通しなどをさとされた上で、ご自分のこれからのご計画なども、おもらしになりました。後で、部長の口から直接お話があろうかと思いますが、それはそれは、われわれが感嘆したくなるような構想を抱いていらっしゃるようです。
部長、どうかこれからもわからぬことばかりの私どもに、おりおりにお知恵とお力をお貸しください。そして、まるで青雲之志(せいうんのこころざし)に燃える青年のような情熱の一端なりとおわかちください。
長い間ほんとうにありがとうございました。そして、ごくろうさまでした。