一郎さん、ますみさん、本日はほんとうにおめでとうございます。
私は、ただいま、ご紹介にあずかりました、新婦ますみさんのピアノ教師をしています、佐々木でございます。はなはだ僭越(せんえつ)ではございますが、ごあいさつの言葉を述べさせていただきます。
私がはじめて、ますみさんにピアノをお教えしましたのは、まだますみさんが6歳で、ほんとうにかわいらしいお嬢さんのときでございました。
お口をきゅっと引き締めて、真剣なまなざしで一生懸命(いっしょうけんめい)、キーをたどっておられた幼いお姿が、つい昨日のことのように思い出され、今、目前の美しい花嫁姿に、つい目頭のあつくなる思いをいたしております。
練習が終われば、学校のお友達のことや、ご自分のちょっとしたいたずらのことなどを、ケーキやビスケットを口いっぱいにほうばりながら、おしゃべりなさったりする天真爛漫(てんしんらんまん)な、明るいおちゃめさんでもありました。
新郎の一郎さんには、私は初めてお目にかからせていただくのですが、ますみさんの話では、一郎さんは中学生のときまでバイオリンを習っていらっしゃったとお聞きしました。本日のために、ますみさんとの合奏をとのご提案もあった由に、もれうけたまわっておりますが、長らく遠のいていたご自分の練習不足のために、せっかくの新妻の腕前をそこねてはという、やさしいお心づかいから、ご辞退なされたとうかがいました。
こうしてお2人が並んでいらっしゃるところを拝見しますと、まことにお似合いのカップルでございます。今回は聞くことをあきらめるとしましても、なにかのおりに、今度こそ、お2人の名合奏を聞かせてくださり、文字どおり琴瑟相和(きんしつそうわ)のすばらしいご夫婦ぶりを拝見したいものでございます。
もし、そのような機会があるようならば、ぜひまた、お招きくださいますよう、あつかましさを承知で、この席をお借りして、ご予約させていただきます。
どうかこの後、人生の荒波に出会われるようなおりには、ご両人の心の弦をも共鳴なさって、今日のこのみごとなアンサンブルで、それを乗り越えていかれますように。末長く幸せなご家庭を築かれますよう、心からお祈り申し上げます。
本日は、まことにおめでとうございます。