ご指名にあずかりましたので、ひと言お喜びを申し上げます。
竜太郎さま、洋子さま、ご両親さま、ご両家のみなみなさま、本日はまことにおめでとうございます。
私は、洋子さまが先生をしていらっしゃる桃の実幼稚園の主任をしております。洋子さまは短大をご卒業になってすぐ、私どもの幼稚園にいらっしゃいまして、はや3年になります。最初は、どなたもそのようなふうではございますが、ご本人自身が幼い子供のように傷つきやすく、頼りなげで、はたして厳しい世間の荒波と申しましょうか、職業人としてやっていけるかしらと一抹の不安を感じさせられたものでございます。
それと申しますのも、洋子さまは、ご両親さまのあふれるような愛情を一身に浴び、人を疑うこともなく、現代風の浮わついたところのかけらもない、純真無垢(じゅんしんむく)なお嬢さまだからでした。その清らかさを好ましく思いますと同時に、「主任、私、もうやめさせていただきます」などと、いついってこられるのかしらと内心ひやひやしていたものでございました。
それが、もう3年。お母さまがたの評判もよく、園児たちからは「ようこ先生、ようこ先生」と慕われ、毎日、水を得た魚のように生き生きとしていらっしゃり、その後に入られた先生がたにも、よき先輩として範を示されていらっしゃいます。わずか3年ほどで、ここまでこられるには、ご本人はどんなにか、ご努力なされたことでしょう。
泣きたいこともたくさんあったと思うのです。でも、明るいけがれのない笑顔は、3年前と少しも変わられていないのでございます。ご結婚後も、洋子さまは、先生を続けられるとうかがって、私ども、ほんとうにうれしく存じております。
そこで、ご新郎さまにぜひともお願い申し上げます。共働きと申しますのは、私なども経験したことでございますが、どうしても女性の負担が重くなるものです。幼稚園の先生というのは、かわいいお子さんたち相手で楽しい、やりがいのある仕事でございますが、それだけに眼には見えない気苦労もあり、体力も必要で、ご主人のご理解とご協力がなくては続けられるものではございません。
どうか、深い愛情の力で、夫としての寛仁大度(かんじんたいど)を示され、洋子さまが能力を最大限に発揮なされるよう、よろしくお力添えくださいますようにお願い申し上げます。
いつまでもお幸せに、力を合わせてすばらしいご家庭を築いていっていただきたいと思います。
本日は、ほんとうにおめでとうございました。