純一くん、敬子さん、ご両親さま、ご親族のみなさま、本日はまことにおめでとうございます。
この佳(よ)き日に、純一くんの中学時代の担任としてお招きをいただきましたことを深く感謝申し上げ、ひと言お祝いの言葉を述べさせていただきます。
純一くん。中学のころ、あのひょうきんでいたずらっ子だったきみが、今ここにこんなすてきな花嫁さんといっしょに並んでいらっしゃることを、あのころには、想像もできないことでした。あのころは、私もまだ新米の教師で、きみのクラスがはじめての担任でしたから、そのクラスの中でもとくに人気者で、元気すぎる少年だったきみのことは、強く印象に残っているのです。
休みの日など、ときどき、「よっ、先生」といって、にかっと笑い、ひとり暮らしの私の下宿の窓をのぞきにきては、「腹へったなあ」などと、焼きそばやお好み焼きを食べて、夕暮れ近くまでおしゃべりしていったことがありましたね。
その純一くんからの結婚招待状、気持ちの上では、つい昨日別れたばかりのようなきみからの書状を手にして、またまたジョークかなと、一瞬信じられない思いでした。
私の入手している情報では、この輝かしいゴールインもクラス仲間のいちばん乗りであり、すべて人に先んじていたきみにふさわしい快挙だと思いました。すっかりおとなびて、たくましくなったきみに、いっしょに遊び、いっしょに勉強したころの、いたずらっ子のきみの面影を重ねて、よくぞりっぱに成長したものだと感慨無量(かんがいむりょう)です。
あなたのお父さん、お母さんが感じられているのとほとんど同じような気持ちで、最愛の弟の門出に立ち会わされている思いでいっぱいです。
これからは敬子さんとお2人で、人生のいろいろな場面に立ち向かっていかれるわけですが、人生楽しいことばかりではありません。苦しいことや、投げ出してしまいたいようなことだって、きっとたくさん待ち受けています。そんなときこそお2人で心を合わせ、乗り切っていってください。
先生としてではなくてけっこうです。いささかの先輩として、私を思い出したら、また、ひょいと窓から顔をのぞかせてください。そして、いつかのように一つの顔ではなく、二つ、ひょっとしたら三つめのかわいらしい顔も交えてのぞいてみてください。
最後に、あなたたちお2人を、ここまでりっぱに育ててくださったご両親をいつまでも大切になさいますようにお願いいたしまして、お祝いの言葉といたします。