先生の突然のご他界の訃報を奥さまより受け、私はもちろんのこと、家族一同、茫然自失(ぼうぜんじしつ)、なにも手のつかないありさまでございました。
享年54歳とは、人生80年という今日、あまりにも早過ぎるお旅立ちではありませんか。あとに残された奥さまやお嬢さまがたのお嘆きは、いかばかりでございましょう。
すでに若くして早々と築き上げられた先生の学問的業績の偉大さは確固たるものでございますが、それにもまして、目下おすすめになられてこられたご研究の成果は、ご専門の分野はいうに及ばず、多方面からの注目の的でございました。その完成を目前にしてのご逝去、弟子の私にとっても、九腸寸断(きゅうちょうすんだん)の思いでございます。
かねがね、ぼくの理想は閑雲野鶴(かんうんやかく)を友とするにありと、おっしゃっていらっしゃった先生のことです。きっと今ごろは、この青い空のどこかを悠然と飛翔されていることだと思います。
先生の手掛けられたご研究は、必ずや近い日に完成され、人間の生活をうるおし、多くの人々に貢献するものと確信いたします。なにとぞ成果をごゆるりとお見守りください。
み霊(たま)の安からんことをお祈り申し上げ、つつしんで弔詞を捧げます。