中国の春秋時代の斉(せい)の宰相であった晏嬰(あんえい)(晏子)の御者(ぎょしゃ)はかっぷくのいい男だったが、それに反して主人の晏嬰は、名宰相のほまれ高い人物であったが、小男であった。あるとき、御者の女房が夫に向かって、「ご主人さまは、えらい人だが、ちっともいばるようなことはなさらないのに、あなたは、その御者でありながら得意顔をしている。こんなことでは見込みがないので、わたしは離婚したいと思います」といった。それを聞いた御者は、それまでの横柄な態度を改めたという故事から、たいした身分でもないのに、主人の権威をかさに着ていばる小人物をたとえる言葉。「虎(とら)の威(い)を借(か)る狐(きつね)」と同義。「御」は、御者(馭者(ぎょしゃ))の意味。
〔例〕「力もないのに晏子之御よろしく、ただいばりまくっているような課長に部下はついてはいきません」などと使ったりする。