中国の周代に虞とという国があり、両国間で田地の境界のことで争いが起こった際に決着がつかず、周の文王に裁きを依頼しようとした。周の国に出かけてみると、その国では田を耕す者は畦を譲り合い、畦道で行き交う者は互いに道を譲り合っていた。それを目の当たりにした両国の人は、文王に会うことが恥ずかしくなって互いに帰国し争いもやめたという。この故事から、転じて、互いに自分の利益を主張して裁判を仰ぐこと。また、自分の悪かったことを互いに悟り、訴訟を取り下げること。または、自己の主張を引っ込めて相手に譲ることをたとえていう。「ぐぜいのそ」とも読む。
『史記(しき)―周本紀』にある記述から。
〔例〕「遺産争いも虞之訴でいけばうまくいくのだが」などと使う。