鶏の鳴き声をまねして人をだましたり、犬のように忍び込んでものを盗むこそ泥という意味から、いやしく下らない人間。こすっからい小人物のたとえ。また、どのような下らない人間でも役立つことはあることをたとえていう。
『史記(しき)―孟嘗君伝』の中に出てくる「秦の昭王の捕虜となった斉(せい)の孟嘗君が、王から釈放の許しを請うために王の愛人である幸姫に頼んだところ、見返りに狐(きつね)のわきの下の白い毛を集めてつくったかわごろもを要求されたが、すでにかわごろもは昭王に献じた後であった。そこで、犬のまねが上手なこそ泥に頼んで王の倉からかわごろもを盗み出し、それを姫に献じて自由の身になることができた。しかし、凾谷関(かんこくかん)まで来ると夜半になって門は閉ざされたままであった。関門は朝が来るまで開かれないと知った孟嘗君は鶏の鳴きまねのうまい男にときの声を出させ、鶏にときをつくらせて、門を開かせることに成功して脱出した」という故事による。
〔例〕「才能がないと思われている人間でも、鶏鳴狗盗で役に立つときもあるよ」などと使う。