故郷を思う気持ちが強いこと。または、ふるさとの味という意味。中国の張翰(ちょうかん)という人が、故郷の蓴菜(じゅんさい)の羹(あつもの)と鱸(すずき)の膾(なます)のおいしい味を思い出し、なんで恋々と虚業にしがみついていることがあろうかと、辞職して故郷に帰ったという故事から。
『晋書(しんじょ)―文苑伝・張翰』に、「翰因レ見二秋風起一、乃思二呉中菰菜蓴羹鱸魚膾一、曰、人生貴レ得レ適レ志、何能覊二宦数千里一以要二名爵一乎、遂命レ駕而帰」とある。
〔例〕「部長、今月かぎりで退社したいので、よろしくお取りはからいください。とくに会社に不満はありませんが、ただ蓴羹鱸膾が忘れがたく、郷里の会社に就職したいのです」などと使う。
〔類〕鱸膾蓴羹(ろかいじゅんこう)