中国の春秋時代、宋の襄公が楚と戦ったときに、公子の目夷(もくい)が先制攻撃を進言したが、襄公は、敵の戦備が整わないうちに攻めるのは仁義に反することだと、目夷の進言をしりぞけ、その結果破れてしまったという故事から、転じて、行き過ぎた無益な情けや、役に立たないあわれみをたとえていう。むだな深情け。
『十八史略(じゅうはっしりゃく)―春秋戦国・宋』に、「宋子姓。商紂庶兄微子啓之所レ封也。後世至二春秋一、有二襄公茲父者一。欲レ覇二諸侯一、与レ楚戦、公子目夷請下及二其未一レ陣撃上レ之。公曰、君子不レ困二人於一レ阨。遂為二楚所一レ敗。世笑以為二宋襄之仁一」とある。
〔例〕部会や朝礼のときなどに、「商道徳に反してもいけませんが、かといって宋襄之仁でも困ります。ビジネスには機略も必要です」といったり、「ビジネスは、先手を心掛けることが大事です。もちろん、ときには慎重に処することも必要ですが、宋襄之仁であっては、この激烈なビジネス社会に生き残ることは不可能です」というように使ったりする。