道に残った車輪の跡の水たまりにいる鮒(ふな)に危険が迫っているように、危険や困難が身に迫っていることをたとえていう。危機が急迫しているさま。貧乏な荘子が魏の文侯に助けを求めたら、近いうちにどかっと税金が入るから、そうしたら大金を貸してやると文侯がいう。そこで荘子は、自分がここへ来る途中、車輪の跡にたまったわずかな水の中から助けを求めている鮒(ふな)に、そのうち楊子江の水で助けてやるよと答えたら、今、少しの水でもほしい自分の願いの通じないのをおこった鮒から、今度会うのは乾物屋の店先でしょうよといわれたという話をして聞かせて、侯をなじったという『荘子(そうし)―外物』にある故事による。
〔例〕「轍鮒之急を訴えるアフリカ難民の悲惨な窮状を見るにつけ、なにかしてあげられることはないかと考えます」などと使う。