中国の春秋時代の晋の史官であった董狐が、霊公が趙穿に攻められて殺されたときに、正卿の趙盾があらかじめ霊公をいさめるということがなく、しかも君主を殺害した趙穿を討つということもなかったので、その罪は趙盾にこそあると書き記した、この『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)―宣公二年』にある故事から、転じて、権勢を恐れず真実を記録し発表すること。
『文天祥(ぶんてんしょう)―正気歌』に、「在レ斉太史簡、在レ晋董狐筆」と記されている。
〔例〕「最近の新聞は、センセーショナルな報道を追うあまりに、不正確な記事を載せたりすることもあるようだが、記者にとって第一に心掛けてもらいたいのは、董狐之筆の精神である」などのように使う。