言葉にしなくとも以心伝心で伝わることのたとえ。多くの弟子を前にして釈迦(しゃか)が説法をしたとき、黙って蓮(はす)の華(はな)をひねってみせたところ、迦葉(かしょう)という弟子だけが釈迦のいわんとするところが理解できたので、にっこりと笑ったという故事から。「拈華」は、華を拈(ひね)ること。
『五灯会元(ごとうえげん)―一』に、「世尊在二霊山会上一、拈レ華示レ衆。是時衆皆黙然、唯迦葉尊者破顔微笑。世尊云、吾有二正法眼蔵涅槃妙心実相無相微妙法門一。不立文字、教外別伝、付二嘱摩呵迦葉一」とある。
〔例〕「山田くんの奥さん、彼がゴホンとせきばらいをするだけで、もう新聞をもってきてくれるんだそうだ。拈華微笑の夫婦だね。うちなんか、とてもそんなことはしない」などと使う。