昔、遼東(現在の中国、遼寧省(りょうねいしょう)の東南部)に住む人が、白頭の豚が生まれたので、珍しいものだと信じて、河東へ行って朝廷に献上しようとしたが、河東には白頭の豚が多くいて珍しがられていなかったという故事から、転じて、見聞が狭いために、世の中にありふれていることも知らずに、自分だけで得意になっている人のことや、ひとりよがりの人間のことをたとえていう。「りょうとうのし」とも読む。
『後漢書(ごかんじょ)―朱浮伝』に、「往時遼東有レ豕、生レ子白頭、異而献レ之。行至二河東一見二群豕一皆白、懐レ慙而還。若以二子之功一論二於朝廷一、則為二遼東豕一也」とある。
〔例〕「A高校で1番だといって、うぬぼれていると大学受験に失敗してしまうぞ。遼東之豕になってはいけない」などと使う。
〔類〕井底之蛙(せいていのかわず)
――「せいていのかえる」とも読む。井の中のかわず、井蛙(せいあ)ともいう。『後漢書(ごかんじょ)―馬援伝』に、「謂レ囂曰、子陽井底蛙耳、而妄自尊大」とある。