計量経済学とは、経済理論に基づいて数理モデル(経済モデル〈economic model〉とも呼ばれる)を作成し、実際のデータを用いてそのモデルの妥当性を統計的に推定(estimate)・検定(test)する経済学の一分野である。具体的なデータを用いる実証計量経済学(empirical econometrics)と、抽象的に統計手法の開発や研究を行う理論計量経済学(theoretical econometrics)がある。
分析の対象となる経済データは、クロスセクション(cross section)、時系列(timeseries)、パネル(panel)の3種類に大きく分かれる。クロスセクション・データは同一時点における異なる複数の種類のデータ、時系列データは異なる複数の時点における同一種類のデータ、パネル・データはクロスセクションかつ時系列、つまり異なる時点における複数の種類のデータを指す。たとえば、ある時点でのクラス全員の身長はクロスセクション・データ、ある特定の生徒の1年ごとの身長は時系列データ、クラス全員の1年ごとの身長はパネル・データとなる。
計量経済学に関連するノーベル経済学賞の受賞は2000年以降、相次いでいる。2000年に、離散選択(discretechoice)や処置効果(treatment effect)の推定方法を提唱したジェームズ・ヘックマン(James Heckman 1944~)とダニエル・マクファデン(Daniel McFadden 1937~)が、2003年には単位根(unit root)や共和分(cointegration)という概念を提唱したロバート・エングル(Robert F. Engle 1942~)とクライブ・グレンジャー(Clive Granger 1934~2009)が、2011 年にはベクトル自己回帰(vector auto regression ; VAR)モデルを確立したクリストファー・シムズ(Christopher A. Sims 1942~)が、それぞれノーベル経済学賞を受賞した。計量経済学の理論的進展に伴う分析ツールの改善に加えて、入手できる経済データの増加およびコンピューター性能の大幅な向上によって、経済学研究における計量経済学の貢献や重要性は近年急拡大している。