人々の意思決定に関する仮定で、個人が首尾一貫した好みを持っていて、自分にとって最も好ましい選択肢を選ぶことを求める。正確には、ある個人の好み(専門的には選好〈preference〉と呼ばれる)が次の二つの性質、完備性(completeness)と推移性(transitivity)を満たす時に合理的な選好と呼ぶ。完備性とは「任意の二つの選択肢が与えられた時に、どちらか一方が望ましい、あるいはどちらも無差別である(同様に望ましい)、という判断を下せる」こと、推移性とは「ある選択肢xよりもyが望ましく、yよりも別の選択肢zが望ましい時には、必ずxよりもzが望ましい」こと、をそれぞれ要求する。経済学において、合理性はしばしば暗黙のうちに仮定されている。日常言語で用いられる場合とは異なり、経済学で定義される合理性には上述のような特別な意味が込められており、特定の価値判断を一切仮定していない点に注意が必要である。