市場を通じて達成される財・サービスの配分がパレート効率的にならないような状況を指す。市場の失敗が発生する原因としては、(1)プライス・テイカーの仮定が満たされない、(2)異なる財が同一の市場で取引されている、(3)市場でそもそも取引されていない財が存在する、などが挙げられる。(1)は独占(monopoly)や寡占(oligopoly)市場などのように市場参加者の数が限定されていて、個々の企業に価格支配力がある(不完全競争〈imperfect competition〉と呼ばれる)場合に、(2)は売り手と買い手との間に情報の非対称性(information asymmetry)があり、商品の品質が事前には判別できないような状況で典型的に発生する。(3)のケースがもたらす重要な問題の一つが外部性(externality)である。公害のように、ある経済主体の行動が市場取引を経由せずに他の経済主体の厚生に直接影響を与える効果を外部性、より正確には技術的外部性(technological externality)と呼ぶ。これに対して、ある市場の変化が他の市場の価格に及ぼす影響は金銭的外部性(pecuniary externality)と呼ばれる。技術的外部性が存在する場合の対処の仕方としては、適切な税金や補助金を課す、あるいは外部性をもたらしている財やサービスを取引する市場を作る(これを外部性を「内部化する」〈internalize〉と呼ぶ)、などの選択肢がある。