ある地域(通常は一国)の全般的な物価水準が持続的に上昇すること。反対に、物価水準が下降する場合にはデフレーション(deflation)と呼ばれる。物価上昇の速さによって、ゆるやかに忍び足で進むクリーピング・インフレーション(creeping inflation)、素早く駆け足で進むギャロッピング・インフレーション(galloping inflation)、非常に急速に進むハイパー・インフレーション(hyper inflation)などに分類される。
一般に、物価は需要と供給のバランスによって決定される。拡張的な財政政策や金融政策などの需要要因によって引き起こされる物価上昇は、ディマンドプル・インフレーション(demand-pull inflation)、生産費用の上昇などの供給要因によってもたらされる場合にはコストプッシュ・インフレーション(cost-push inflation)と言う。インフレーションは景気が過熱している好況時に起こりやすいが、失業が増大している不況期に生じた場合には特にスタグフレーション(stagflation)と呼ばれる。これは、景気停滞(stagnation)とインフレーションの合成語である。
1年間あたりの物価上昇率はインフレーション率、あるいはそれを短縮したインフレ率と呼ばれる。マイナスの場合であってもデフレーション率ではなく、インフレーション率と言うので注意。インフレ率を一定の目標範囲に抑えることに中央銀行があらかじめ約束するような政策を、インフレーション・ターゲティング(inflation targeting)政策、あるいはインフレ目標政策と言う。インフレ・ターゲティング政策は主に、高すぎるインフレ率を抑えるために各国で採用され、有効な手段として機能してきた。近年の日本のようなデフレーション下で、低すぎるインフレ率を上昇させるための同政策の有効性については、マクロ経済の専門家でも意見が分かれている。