同一のプレーヤーたちが毎期同じゲームをプレーする時に、全体を一つの時間を通じたゲームとみなして繰り返しゲームと呼ぶ。社会における長期的な関係を描写するのに適したモデルで、共同体における協調行動の実現や、企業間の暗黙のカルテル形成など、様々な動学的な現象の分析に応用されている。あらかじめゲームが終了する時期がプレーヤーたちに分かっている場合を有限回繰り返しゲーム(finitely repeated games)、終了期が正確には分からず、常に次の期がプレーされる可能性がある状況を無限回繰り返しゲーム(infinitely repeated games)と言う。
無限回繰り返しゲームにおいては、長期的な関係を通じてほとんどすべての結果が実現できることが知られている。具体的には「プレーヤーたちが将来に発生する利得をほとんど割り引かずに評価する場合に、各プレーヤーが最低限受け取ることのできる利得(留保利得 reservation payoff)より高いどんな利得の組み合わせも、長期的なプレーがもたらす平均的な利得として実現することができる」。この主張はフォーク定理(folk theorem)と呼ばれ、1950年代には既にゲーム理論研究者たちの間でその成立が予想されていた(「フォーク」は、フォークソングなどと同じ「民間の」という意味)。フォーク定理を1959年にはじめて論文の形で示したロバート・オーマン(Robert J. Aumann 1930~)は、2005年にノーベル経済学賞を受賞した。
プレーヤーたちの間で過去の行動がすべて観測できる場合を完全観測(perfect monitoring)、正確には観測できない場合を不完全観測(imperfect monitoring)と言う。後者の不完全観測はさらに、プレーヤーたちが過去の行動と相関する共通のシグナルを受け取る公的観測(public monitoring)と、個別に異なるシグナルを受け取る私的観測(private monitoring)のケースに分類される。私的観測の繰り返しゲームは、完全観測や公的観測の場合とは本質的にモデルの性質が異なり、長らく分析が困難であったが、2000年代に入ってようやく、様々な一般的な状況で協調を達成する方法が明らかにされつつある。