一定の条件の下で、異なるルールのオークションが同一の期待収入を売り手にもたらすことを明らかにした命題。収益同値定理や収入等価定理、などとも呼ばれる。個々の入札者が財に対する自分自身の評価額しか知らず、他の入札者の評価額は確率的にしか分からない、という不完備情報(incomplete information)の要素を織り込んだゲーム理論モデルから導かれる。競り上げ式の公開オークションと勝者が自分の入札額を支払う封印入札の期待収益が等しくなることを初めて理論的に示したウィリアム・ヴィックリー(William S. Vickrey 1914~1996)は1996年に、不完備情報下での制度設計に関する基礎理論(これはメカニズムデザイン〈mechanism design〉とも呼ばれる)を確立し、収入同値定理を大幅に一般化したロジャー・マイヤーソン(Roger B. Myerson 1951~)は2007年に、それぞれノーベル経済学賞を受賞した。現実に様々なルールのオークションが使われているのは、収入同値定理によってそれらの収益に大きな差がないからだ、と理解することができる。