政府があらかじめ決められた歳入を賄う際に、課税しても公債を発行しても人々の消費行動には一切影響を及ばさない、という考え。19世紀にイギリス人経済学者デビッド・リカード(David Ricardo 1772~1823) によって提唱された。公債発行によって課税を先延ばししても、いずれ政府は返済する必要がある。そのときに行われる将来の課税に備えて、つまり将来の増税を先読みして、消費をせずに貯蓄にまわしてしまう、というのが基本的な発想である。現実には、すべての家計がこのような先読みを行っているとは考えにくく、増税を行えば、少なくとも短期的には消費が落ち込む。そのため、リカードの等価定理が文字通り成立する状況は非現実的であるが、財政問題やマクロ経済政策を議論する上で、議論の出発点としてこの定理はしばしば参照される。1970年代にアメリカ人経済学者ロバート・バロー(Robert J. Barro 1944~)が、現代的な数理分析の枠組みでこの主張を厳密に証明したことから、リカード=バローの等価定理(Ricardo-Barro equivalence theorem)と呼ばれることも多い。