法律で義務付けられている公認会計士による法定監査には、大きくわけて2種類ある。一つは、株式上場会社などの有価証券報告書を金融庁に提出するための証券取引法監査。もう一つは、資本金5億円以上か負債200億円以上の株式会社に対する会社法監査。この他、東京証券取引所が上場企業に求めている「四半期開示」などの任意監査もある。2005年9月、監査先企業であったカネボウの粉飾決算への加担を理由に、中央青山監査法人所属の会計士が逮捕されたことを受けて、日本公認会計士協会は同月、7年を超えて同じ会社の監査を担当している会計士を早期に交代させるよう要請するなど、四大会計監査法人に対して自主規制の強化を促した。中央青山は、トーマツ、新日本、あずさと並ぶ四大監査法人の一つとされ、業界シェアでトーマツに続く第2位だった。金融庁は、中央青山に06年7月から2カ月間の業務停止を命令。業務停止命令の対象となる監査先企業は2300社に上り、中央青山は証券取引法監査に加えて、会社法監査も業務停止命令の対象となり、監査先企業は、一時監査人を選ぶなどの緊急対応を迫られることになった。こうした事態に対して、金融審議会の公認会計士制度部会は、(1)現行の会計士法では所属会計士が粉飾決算に関与しても監査法人に刑事罰が及ばない点について改正の方向を示し、(2)監査先企業の投資家から損害賠償訴訟を起こされた場合、会計士が無限連帯責任を負う必要がある点について、会計士の有限責任制への移行を検討した。この結果、07年6月に成立した改正公認会計士法には、粉飾決算などに加担した監査法人に対して、期間中に受け取った報酬の1.5倍の課徴金を科すほか、業務改善命令の新設が盛り込まれた。なお、中央青山監査法人は、06年9月にみすず監査法人に名称を変更し、その後解散した。