民主党は、2009年8月の衆議院議員総選挙時のマニフェストに、国家公務員総人件費の2割削減を盛り込み、政権交代によって、その公約の実現を目指した。公務員人件費を削減するには、少なくとも公務員の人数削減か公務員給与水準の引き下げを断行する必要がある。
公務員給与は、基本的に人事院勧告制度によって決められてきた。ストライキなどの労働基本権が制約された国家公務員の労働条件について、人事院が官民の給与格差などを調べ給与改定を内閣・国会に勧告するのが人事院勧告制度。05年8月に1957年以来48年ぶりに国家公務員の給与構造の大幅改定が勧告された。その結果、2006年度から5年かけて段階的に基本給を平均4.8%引き下げ、剰余分を都市部に勤務する職員への地域手当に充ててきた。
こうした公務員給与の削減トレンドに加えて、東日本大震災からの復興財源の一部に国家公務員の給与削減が盛り込まれ、12年2月、民主党、自民党、公明党など与野党の賛成多数で「国家公務員の給与の臨時特例に関する法律」が成立した。これにより、国家公務員の給与は12~13年度の2年間にわたって平均7.8%引き下げられる。緊急かつ臨時の給与引き下げとはいえ、結果として、12年度の人事院勧告であった平均0.23%を超える引き下げの断行は、人事院発足の1948年以来初めてのこととなり、過去の人事院勧告による削減幅(0.22~2.03%)と比べても例外的に大幅なものとなる。
総人件費は、2012年度予算案では今回の特例法や人員カットも含めて4兆7900億円で、政権交代前の09年度からは1割弱の削減となる。今回の削減で2年間に捻出する約5880億円は、東日本大震災の復興財源に充てられる。民主党の公約である「2割削減」の実現は厳しい状況だが、労働基本権を制約されている公務員側としても、議員立法によって結果的に人事院勧告を無視した政府に対する不信感が募っており、裁判で憲法違反を争う構えもある。