日本の生産活動は、2008年7-9月期から09年1-3月期にかけて戦後最大の落ち込み幅を示した。その後、緩慢ながらも回復ペースにある。この背景には、(1)中国を中心とするアジア向け輸出の持ち直し、(2)民間消費及び公共事業への経済対策による押し上げ効果の浸透がある。景気の悪化を受けて、政府は08年央から09年春先にかけて4次にわたり経済対策を実施。特に、09年4月の対策(「経済危機対策」)は事業規模約57兆円(うち、国費15兆4000億円)と、国内の金融システム不安時に策定された1998年の経済対策の規模(事業規模約24兆円、国費7兆6000億円)を大きく上回り過去最大。経済対策は、当初3回は雇用及び金融面を中心としたセーフティーネットの拡充に重点が置かれたが、経済危機対策では公共事業の追加に加え、環境への対応も兼ねた環境対応車の買い替え・購入促進策(いわゆるエコカー補助金、エコカー減税)、省エネ型家電(グリーン家電)への購入促進策(エコポイント制度)など、需要創出を目的とした政策が多く盛り込まれた。ただし、2009年8月投開票の衆議院議員総選挙で実現した民主党への政権交代により、一部の予算の執行停止も実施されている。新政権下で策定された09年12月の経済対策「明日の安心と成長のための緊急経済対策」は、事業規模こそ24兆4000億円(うち、国費7兆2000億円)に達したものの、「コンクリートから人へ」の基本方針に基づき、従来型の公共事業関係費を大幅に削減した内容となっている。現状の景気回復力は弱く、雇用環境はむしろ悪化傾向にあり、景気の二番底を懸念する見方もある。