2008年9月のリーマン・ショック以降、日本の景気は2010年前半ころまで緩慢な回復過程にあったものの、年央以降、急速に景況感が悪化している。景気を牽引(けんいん)したのはアジア向け輸出を中心とする外需であった。また、内需は環境対応製品への購入促進策の実施が好影響、エコカー減税・補助金、エコポイント制度などの減税効果により一部の耐久消費財で需要の拡大も見られた。その中で、10年6月7日には景気動向指数研究会で09年3月が景気の谷と暫定決定(景気基準日付)され、同月18日の月例経済報告では「自律回復への基盤が整いつつある」として「回復」と言及された。しかし、ほぼ同じころ、中国・ヨーロッパ経済への不安の高まりを背景に、10年6月23日のアメリカFOMC(連邦公開市場委員会)で景気認識が慎重めになったことから、市場を中心に世界経済への先行き懸念が強まり、景況感が大きく変化し始めた。その後は、日米欧の中央銀行ではさらなる緩和政策を実施、景気の先行きを見守るようになっている。また、日本政府も10年9月10日の月例経済報告で「環境は厳しさを増している」と景気認識を下方修正し、二番底(底を打った後に小反発して再び底を打つこと)の懸念も高まっている。ただし、10年末に行われた日本経済新聞の大手企業に対する「社長100人アンケート」によると、二番底の懸念は薄まっているとの回答や、11年の年央以降には景気の本格回復も期待できるとの回答も増加しているとのこと。中国をはじめとした新興国経済の堅調さや円高の一服感がプラスに働いたのが貢献したようだが、これらには不確定要素が付きまとう。