一般的に価格は、需要あるいは供給の変更により変動することが知られている。しかし、需要と供給の変動に対して価格変動が全くない、あるいは微小な場合を価格硬直性という。労働市場においては、景気が悪化しようとも、労働の対価である賃金が下落しない場合を賃金の下方硬直性という。その結果として失業状態にある労働者にとっては、実質的に賃上げとなった労働市場において、いっそう雇用されにくい状況が生じる。他方、ベースアップを実施すると、その後に経済活動が急激に悪化した場合でも賃金表を下方に改定することは困難であるとの判断から、企業は景気が回復しても賃金表の上方改定に慎重になるとの見方も示されている。このような状況が賃金の上方硬直性の例として挙げられ、欧米でも同様の状況が確認されている。