2003年後半以降、原油価格が高騰し、世界経済の景気後退リスクになっている。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX New York Mercantile Exchange)の標準銘柄であるWTI先物価格(WTIはWest Texas Intermediate)は、03年初には1バレル当たり25ドル近辺であったが、その後、小刻みな変動を繰り返しながら上昇傾向を保ち、04年9月に41.23ドル、05年7月に53.17ドル、同年8月に66ドル、06年7月に78.40ドル、07年9月に80.09ドル、同年10月には90.02ドル、08年1月4日には初めて100ドルを突破した。このような原油価格の上昇は、(1)世界経済の回復を受けてエネルギー需要が拡大した上、(2)中国、インドなど人口規模の大きい新興国経済の急成長で生産、消費両面から原油需要が急激に増加するなどの需要増加に加えて、(3)石油輸出国機構(OPEC Organization of the Petroleum Exporting Countries)の生産余力の減少、(4)イラクを含む湾岸地域でのテロによる生産停止の可能性、など供給面での不安が表面化したためである。さらに最近では、このような市場環境の変化を受けて、(5)大量の投機マネーが原油先物取引に流入したため、原油価格が単に上昇するだけでなく、予測できない上下変動を繰り返すようになった。特に01年以降のアメリカにおける金融緩和が流動性を供給し、それが原油市場にも流入したが、株式や債券市場に比べると取引量が極端に少ないため、流動性のわずかな流出入でも価格は大きく変動するという傾向をもっている。また、マレーシア、インドネシアなどではガソリンなどの価格安定のために補助金制度を導入しているが、原油高にともなって膨張した補助金額で国家財政がひっ迫するという問題も引き起こしている。これに対して、サウジアラビアを中心にOPECは生産能力の増強に努めているが、短期間での効果は期待できない。