特定地域における政治的、軍事的緊張の高まり(地政学的な混乱)が原因で世界経済の先行きを不透明にすること。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロとその後のアフガニスタン侵攻、03年のアメリカ・イギリス軍のイラク侵攻などによる紛争地域の直接的経済被害に加えて、アメリカではテロ対策費や戦費調達、さらに侵攻地域の経済復興支援などが財政赤字を肥大させ、金利上昇や先行き不安による株価下落の一因となるなど、経済の不安定化要因になってきた。特にイラク戦争後、治安が改善せず、軍の駐留が長期化しているために駐留費用が増大しているほか、復興支援の費用も莫大な額にのぼっている。また、社会資本整備面では、大規模ミサイル攻撃や地上戦でその1割以上が失われたイラクの社会基盤(道路、学校、病院、空港、港湾、油田など)の再整備だけで数千億ドルの資金が必要である。また04年以降、スペイン、インドネシア、イギリス、インドなどでも都市テロが断続的に発生し、その対策も各国の財政負担になるほか、空港、公共ビルなどの安全検査のコストも無視できない。さらに、テロ活動の支援資金の流れを断絶させるために各国は共同でマネーロンダリング(資金洗浄)対策に取り組んでいるが、金融送金、決済などで不必要なコストが発生するなど、テロ対策は一般経済活動に対して無視できない影響を与えている。