韓国、香港、台湾、シンガポールなど、アジア諸国の合計特殊出生率(女性一人が生涯に産む子どもの平均数)が急速に低下している。2005年の合計特殊出生率は香港0.966、台湾1.12、シンガポール1.24、韓国1.08といずれも日本の1.25を下回っている。日本を含め、これらの国は高学歴化、女性就業率の上昇にともなう未婚者と晩婚者の増加という共通の構図をもっている。また共働きが多いシンガポールでは、これまでは祖父母が子育てを支援していたが、近年は高齢者も独立した生活を好むようになり、子どもの世話を引き受ける祖父母が減少している。日本のような国民皆年金制度のない台湾、シンガポール、香港では年金破たんの懸念はないが、労働力人口の減少につれて税収が減少する一方で、高齢者を対象とした社会保障給付が増加するという問題を抱えることになる。ちなみに、04年の合計特殊出生率は世界平均で2.6、フランス1.9、イギリス1.74、ドイツ1.33、アメリカ2.07(03年)であった。このように先進工業国や東南アジア諸国では出生率が急激に低下し、それが社会的、経済的に新しい問題を引き起こしているが、一方では世界全体では人口増加が続き、06年2月に65億人に達した(アメリカ商務省調べ)。世界総人口は20年後の2026年には79億人に達すると予測され、それにより、発展途上国、最貧国における食料・エネルギー不足を深刻化させるとみられている。