2009年2月17日に成立した、アメリカのオバマ政権の景気対策法に織り込まれた条項。1933年の大恐慌時にアメリカ政府が制定したバイ・アメリカン法を裏付けとし、その名の通り、公共事業で使う鉄鋼製品などの購入(buy)に際して、アメリカ製(American)とすることを義務付けている。その目的は、アメリカの国内産業の保護と雇用の確保だ。政府が購入を約束してくれれば、アメリカの鉄鋼メーカーは、日本や中国などの輸入品との競争することなく販路を確保できるため、生産は安定し、雇用の確保も可能となる。しかし、バイ・アメリカン条項は、保護貿易を拡大させる恐れがある。自国産業を保護することは、他国の産業を閉め出すこと。閉め出された国は、報復として、自国内で自国製品の購入を優先させる行動に出る。「バイ・ジャパニーズ条項」や「バイ・チャイニーズ条項」が打ち出されてしまうのだ。これによって、世界の貿易は急激に縮小、競争がなくなることで生産効率も低下し、世界経済全体がより深刻な危機に陥ってしまう。33年のバイ・アメリカン法では、各国政府が報復、世界経済は閉塞状態に陥り、これが第二次世界大戦を引き起こしたとされている。大恐慌の再来と言われる危機に直面している世界経済にあって、「歴史は繰り返す」の言葉通りに登場したバイ・アメリカン条項。悲惨な歴史を繰り返さないためにも、その拡大を食い止めることが求められている。