欧州中央銀行(ECB)は、リーマン・ショック後の2009年5月から2年近く政策金利を史上最低の年1.0%に据え置いたが、資源高による物価上昇を受けて、トリシェ総裁の下、11年4月と7月に0.25%ずつ利上げを実施し、物価安定を優先する金融政策を継続した。また、危機対応として、期間1年の資金供給や銀行が発行する担保付き社債の買い入れなどの追加資金供給策を決定した。さらに、例外措置として、ギリシャ、ポルトガル、アイルランドに加えて、金利が急上昇していたイタリアとスペインの国債の買い入れの意向を示した。
11年11月に就任したドラギ総裁は、金利据え置きの市場予想に反して、立て続けに利下げを行い、再び年1.0%の最低水準にまで政策金利を引き下げた。また、1年強が最長であった資金供給策に、銀行向けの期間3年物を設けた。しかし、債務危機にある国の発行した国債の買い入れ策に関しては、一時的で限定的な措置として継続はするが、EU条約が禁じる中央銀行による政府の財政引き受けに当たるとして、慎重な姿勢を見せている。こうしたECBの消極的危機対応は、アメリカやイギリスの非伝統的な金融政策としての量的緩和の導入とは対照的である。