リーマン・ショック後の不況対策などにより、議会が定めた借り入れ上限の14兆2940億ドル(約1110兆円)に達したアメリカの債務残高の上限引き上げ問題で、民主・共和両党は2011年7月末に、2.1兆ドル(約163兆円)の債務上限の引き上げ、10年で2.4兆ドルの財政赤字削減で合意し、債務上限引き上げ法案が可決され、アメリカ史上初の債務不履行(デフォルト)が回避された。そこでは、今後10年間で9000億ドルの歳出の削減に加えて、議会に設置された超党派の委員会において、11月までに1兆5000億ドルの歳出削減策を策定することとなった。しかし、同委員会が11月までに歳出削減策をまとめられない場合、予算管理法に基づく「トリガー(引き金)条項」が発動され、13年からインフラ投資などの裁量的経費と国防費を同額ずつ強制的に削減することになった。
11年8月に、格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)が史上初めて、アメリカ国債の長期格付けをトリプルAから一段階引き下げ、ダブルAプラスにした。S&Pは、信頼に足る財政再建には今後10年で4兆ドル程度の財政赤字の圧縮が必要だとし、2.4兆ドルの削減合意では不十分だと判断した。富裕層向けの増税が必要であると主張した民主党に対して、増税に反対する共和党との間で合意に至らず、11月に超党派委員会は財政赤字削減策の取りまとめを断念した。その結果、先のトリガー条項の発動をめぐり、両党で妥協が図られる見込み。