金融危機の再発防止を目指し2010年に成立したアメリカの金融規制改革法(ドッド・フランク法)は、潤沢な資金力を有するロビイストの抵抗に遭い、具体的な規制を策定する工程表が進んでいない。銀行によるデリバティブ(金融派生商品)の自己勘定取引の禁止を命じる「ボルカー・ルール」の導入、大規模金融機関の連邦準備制度理事会(FRB)による監督など、規制の行方が危ぶまれている。また、アメリカ財務省は、デリバティブなどの金融取引の内容を把握し、金融監督に生かすため、金融機関に識別番号をつける「法人識別制度」(リーガル・エンティティー・アイデンティフィケーション ; LEI)の仕組みを採用した上で、取引内容のアメリカ財務省金融調査局への報告を義務付ける規制の導入を進めている。
また、主要国・地域の金融当局で構成する金融安定理事会(FSB)は、世界の巨大28社に自己資本比率の上乗せを求める規制強化策を発表した。金融機関への新資本規制としては、主要国の金融監督当局でつくるバーゼル銀行監督委員会が、19年までに「中核的自己資本比率」7%の義務化を求めている「バーゼル3」のほか、欧米の大手商業銀行・投資銀行・日本の3メガ銀行を含む28社に対して、1から2.5%の上乗せを課す。