ニューヨークのウォール街周辺で始まった格差抗議デモは、富裕層と大企業への課税強化などオバマ大統領の掲げた改革が実現しないことへの不満から表出した。党派色のない独立した機関であるアメリカの議会予算局(CBO)によれば、デモの背景にあるアメリカの格差は拡大している。同じく景気後退に入る直前の1979年と2007年を比較し、全体の平均所得増加率が62%であるのに対して、上位1%の最富裕層の所得が275%、同じく上位2割の所得が65%増加。一方、中間層は37%、下位2割の低所得層は18%しか増加していない。原因として、富裕層が給与を含む各種所得、とりわけキャピタル・ゲイン(値上がり益)が増えたことが挙げられる。
11年10月には、アメリカ有数の億万長者で著名投資家のウォーレン・バフェットが、前年の同氏の所得がほぼ6300万ドル(約49億円)で、連邦所得税として690万ドル(約5億3000万円)を支払ったことを明らかにした。これは所得税率にして11%に過ぎず、同氏の秘書をはじめとした多くの中間所得階層の所得税率よりも低く、富裕層にはより高率の所得税を課すべきだと主張した。12年1月の一般教書演説で、オバマ大統領は年収100万ドル以上の富裕層向け課税(通称バフェット税、最低税率30%)の創設を提唱したが、ロイターとイプソスの世論調査によると、国民の6割以上がバフェット税を支持している。