日本では諸外国に比べ法人税率が高いことが問題視されているように、多国籍企業にとっては、法人税率の低い国に本拠を置くことで、納税額を減らそうとするインセンティブが働く。2012年には、スターバックスのような世界的な優良企業において、イギリスの子会社での利益をスイスなどに移して同国ではほとんど納税していない「課税逃れ」があるとして批判が集まった。なお、欧州連合(EU)の場合、税率や優遇措置などを含む税制はそれぞれのEU加盟国に強い権限があり、こうした問題を解決できない。そのため、EUの執行機関である欧州委員会では、域内での税制を早期に統一すべきとの意見が出ている。また、経済協力開発機構(OECD)ではこうした課税逃れに対し、14年7月に「税源浸食と利益移転(BEPS ; base erosion and profit shifting)行動計画」を発表して、世界で統一された課税方法の必要性を提言。さらに15年10月にはタックスヘイブン(租税回避地)を使った税逃れなどを防ぐ新たな国際ルールを発表した。新ルールは同月の主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも採択され、関係各国が国内法を整備することになった。